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- 劇団Uzume『あの夏の飛行機雲』〜法螺貝が見えた気がする〜
法螺貝を吹いていたあの人が出演
10月の最後は、青春バスケット演劇を観てきました。
劇団Uzumeによる舞台『あの夏の飛行機雲』です。
劇団Uzumeは、バチェロレッテ2に出演していた“たぎり散らかしている法螺貝”こと、雲母翔太さんが所属する劇団です。偶然お誘いいただいた舞台だったので、雲母さんとの運命を感じました。
会場はGARDEN新木場FACTORYというところで、「劇場まで結構歩きますよ」と事前に言われていた通り、新木場駅から20分くらい、ひたすらまっすぐに歩いていきます。そろそろかな? と思ってから、さらにもう10分くらい歩きます。すると見えてきました。
会場内には、なんとキッチンカーが。こんな祭り的な感じだとは知りませんでした。あると知っていれば、ここで食べたのに。駅で蕎麦なんか食べるんじゃなかった。
ファンから出演者への横断幕もたくさん飾られていました。
うちわも。
バスケットボールも。
若手俳優が多数出演するということで、ファン参加型のイベントも充実しているみたいです。こちらの作品は、バスケットボールがテーマということで、劇場というよりコートでした。
普段は、音楽ライブやファッションショーのほか、映像作品の撮影スタジオなどに使われているそうです。十分な広さがあるので、バスケの試合もできるというわけですね。ただし、会場の写真をご覧のとおり、客席との間に仕切りはありません。ボールが飛んでくる可能性もあるのでは? と不安になると思います。実際、飛んでくることもあるということを、キャストの方の前説で伝えられました。万が一飛んできたら、素早く腕で顔面をガードしてくださいとアナウンスされたので、もしものときはそうしようと思いました。
芝居中でのフリースロー
あらすじはこちら↓
物語の舞台は、ある高校の男子バスケ部。
3年生にとって最後の大会を目前に控えたある夏の日。キャプテンであり、ムードメーカーでもあった立花圭人が、不慮の事故で亡くなる。
部員たちは突然の別れを受け入れることができず、試合は散々な結果に。部員たちの溝は埋められることなく、皆それぞれの人生を歩みだすが……。
ネタバレしますが、この作品、タイムリープものです。亡くなったキャプテンの弟・立花壮太が高校時代に戻って最後の大会をやり直す! のが、話の主軸。そんなストーリーだとはまったく予想していなかったので、最初は聞き間違いかと思いました。サプライズですね。
タイムリープした直後、壮汰が「どうせなら、兄の事故の前に戻ってくれればよかったのに」と言うのがちょっと切なかったです。亡くなった事実は変えられないんですよね。
壮太はもともとバスケ部ではなかったのですが、過去に戻ったことで、自身もバスケ部に入ることを決めます。そこで、兄がいかにメンバーに必要とされていたかを知るわけです。ギスギスしていた皆も、やがて心ひとつになっていきます。ちなみに、雲母さんは主要キャストの一人として登場します。ガッツはあるけどバスケはちょっと下手という役どころでした。実際下手なのかどうかは、私にはわかりませんでしたが、まっすぐ過ぎて不器用なキャラクターはよく合っていたと思います。たぎり散らかっていたと思います。
タイムリープを用いた、今どきの青春ストーリーももちろん面白いのですが、見どころはやはり、バスケの場面です。途中、シリアスな場面で、キャストが何気なくフリースローをするのですが、これがなかなか入らない。芝居の中でシュート決めるのはそりゃ難しいですよね。ただ、外れたら外れたで、そのまま芝居は続いていきます。リアクションはその場のアドリブなんでしょうね。そのリアルさもまた面白かったです。
中盤とクライマックスで二回ほど、コートを半面使って、出演者がガチでバスケをするシーンがありました。キャストは恐らく、全員バスケ経験者なのだと思います。本当に上手かったです。目の前で試合をしているので、臨場感しかありません。幸い、ボールがこちらまで飛んでくることはありませんでしたが、飛んできたら怖いなと思うくらいの迫力とスピード感でした。
クライマックスの試合では、10分? 15分? それくらいの間、ノンストップで試合をします。場内は熱気が漂い、徐々に汗のにおいもしてくる。本当の体育館みたいでした。あるタイミングで、みんながストップモーションになり、ボールを持ったキャストが台詞を言って、その直後また動き出す、という演出がお見事。みんな夢中になって試合をしてるかと思いきや、同じタイミングでぴたっと止まるわけです。それが3回、4回くらい続きます。本当にあれどうやってタイミング合わせてるんだろう?
そして、試合の最後は、壮太のシュートで決まります。(たしか壮太だったはず。違ったらごめんなさい)緊張感の中、壮太がボールを投げます。外してしまいました。ここも恐らく、入っても外してもいい場面。入ったあとの芝居も観てみたかったです。この一連の試合シーンが圧巻だったため、結局試合に勝ったのか負けたのかは忘れてしまいました。
しかし、試合の結果なんかどうでもいいのです。重要なのは、この試合を経て、部員みんなの心が繋がったということ。壮太のタイムリープ大作戦は、成功に終わりました。そして時は現代へ。
「お前の席ねーから」的なあれか?
壮太の活躍により、未来は変わっていました。散り散りだった皆は、仲の良いチームメイトへと変わり、部活の同窓会を開いています。そこへ壮太がやってきます。もともとの時間軸では、壮太はバスケ部ではないので同窓会とも無関係ですが、新しい時間軸では壮太はバスケ部です。仲間に加わるんだなと思いきや、
「君は、たしか圭人の弟?」
「今日はバスケ部の同窓会だけど…」
あれ? どういうわけか、壮太はバスケ部にいなかったことになっています。
しかし壮太は、「僕も参加させてください」と言って、無理やり同窓会に参加して物語は幕を閉じます。
最後の最後だけ、なんでだろう? 未来は変わったんじゃないの?? 壮太かわいそう……と思ってしまいました。後々、たまたまお会いした関係者の方から聞いた話によると、どうやら「いくつかの未来のうちの一つを観た」という設定だったそうです。MCUでいうところのマルチバースですね。壮太が過去に戻ったことで、バスケ部の問題は解決したけれど、その先に続く未来は、またいくつも分岐されているということみたいです。つまり私たちが観たのは、「バスケ部の問題は解決したけど、壮太がバスケ部には入っていない」時間軸の未来だった……という認識で合っていますか? 解決したと思ったのに、急に不安になってきました。
とにかく、未来はいくつもあるのです。それにしても、壮太がバスケ部として同窓会に加わるシンプルなハッピーエンドでも良かったのに、あえてこの終わり方にしたのは、作家の何かしらの意図を感じます。
それにしてもよく、これだけバスケができるキャストを集めることができたなと感心しました。もう一度集まれと言っても難しいのではないでしょうか? もっと早くに観に行っていたら、色んな人におすすめしたかったなと思える舞台でした。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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