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- 趣向『オノマリコフェス』〜前編・伝説の劇作家〜
覚えてますか『せりふの時代』
週末は神奈川県立青少年センター スタジオ HIKARIで開催された『オノマリコフェス』へ行ってきました。
オノマリコさんは、
オノ マリコさんではなく、
オノマ リコさんです。
神奈川県を拠点に活動されている劇作家さんです。
2010年から「趣向」という一人ユニットで活動されていましたが、今年の4月より「趣向」が劇団化。それを記念して、開催されたのが『オノマリコフェス』です。
オノマさんの作品は直近だと、2021年に上演された『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』 を観ました。スケジュールの都合がつかず配信で観たのですが、やっぱり生で観たかったなという感想。
そもそもオノマさんを知ったきっかけは何だったかというと、『せりふの時代』です。
小学館が発行していた季刊の戯曲雑誌で、残念ながら2010年夏号を持って休刊しています。
休刊直前の春号に、オノマさんの『キョウダイ』という戯曲が、短編戯曲入選作として掲載されました。当時大学で演劇を学んでいた私はそれを読んで、衝撃を受けました。なんかよくわからんけど面白いと感じたのです。
観念的なストーリーなのに、「大学」とか「信州」とか「受験」とか生活感のある言葉が随所に出てくるのが、最高にイケてる。
宇多田ヒカルの『光』の歌詞の中で、突然「テレビ」が出てくるあの感じに似てるんですけど伝わるでしょうか。
※『キョウダイ』は趣向のサイトで全編無料公開されています。私の気持ちが伝わる人がいますように…。
同時に、これ一体どうやって演出するんだろう? と謎でした。登場人物はAとBの二人。ト書きはなく、全編この二人のセリフのみで進行します。舞台設定の指示もありません。
舞台に、突っ立って、喋るの……?
私には演出家の脳がないんだということに、このとき気づきました。
ちなみに、私は『キョウダイ』にインスパイアされて、当時オリジナルのシナリオを書きました。三つ子の姉妹の殺人事件のお話です。もとの話しとまるで違いますが、ベースは誰がなんと言おうと『キョウダイ』です。
また、同じ春号に乗っていたマキノノゾミさんの『ポン助先生』という戯曲も好きで、こちらはまた別の作品の参考にさせていただきました。そんなわけで『せりふの時代』2010年春号は私にとってかなり重要な一冊であります。いまも大事に保存しています。
インターネットがあってよかった!
さてオノマさんの話しに戻りますが、雑誌の中で作者の情報は名前以外にはありませんでした。なのでどこで何をしている人なのかまったくわかりません。
当時ネットで検索するという習慣もなかったので、オノマリコさんは私の中で長い間「伝説の劇作家」として封印されていました。
しかし、あるときふと「そういえば、あの劇作家はどうしているんだろう?」と思い立ち、なにげなくオノマリコさんの名前を検索したのがたしか2019年とか。
すると、「趣向」というソロユニットで演劇を続けていることがわかりました。今も昔も演劇を続けるのは、それなりの情熱がないと難しいことです。でも、オノマさんはずっと活動されていて、新しい作品もたくさん世に出している。
やっぱり私の目に狂いはなかった。
とはもちろん思っていませんが、純粋にとても嬉しかったです。
しかも『オノマリコフェス』では、私の中の伝説的作品『キョウダイ』も上演される。これはぜひとも観に行かなければならない。ということで、夏風邪で鼻の機能が失われている中、神奈川県青少年センターへと向かったのでした。
長いので分けます。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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