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- 澤村伊智『怖ガラセ屋サン』〜怖がらせて世直し〜


真島さんから、澤村伊智先生の本をたくさん貸してもらいました。
澤村先生の本はとても読みやすいので、さくさく読むことができます。
一冊目はこちら↓。『怖ガラセ屋サン』です。
※わりとネタバレしています。読んでない方は気を付けてください。
いろんなパターンで怖がらせてくれます

誰かを怖がらせてほしい。戦慄させ、息の根を止めてほしい。そんな願いを考えてくれる不思議な存在――。「怖ガラセ屋サン」が、あの手この手で、恐怖をナメた者たちを闇に引きずりこむ!
ターゲットを怖がらせることで世直しするという、ダークヒーローです。
全7話を収録した短編集で、すべての物語に怖ガラセ屋サンが何らかの形で、介入してきます。
怖ガラセ屋サンの人物像は、作中ほとんど明かされていません。でも多分、女性です。
そんな怖ガラセ屋サンが、恐らく、依頼人から頼まれて、ターゲットを怖がらせて、どん底に突き落とすという流れです。
どうやって依頼を受けているのだとか、その辺りについては特に言及されていませんが、基本的には世間的によろしくない人たちに対して、恐怖をくらわせているので、スカッとさせてくれます。
恐怖といっても、心霊的なものを操って攻撃することもあれば、ただ精神的に怖がらせるだけのときもあり、バリエーション豊か。いろんなパターンを考えてくれる怖ガラセ屋サン。
4人まとめて怖ガラセだドン
私が一番好きなのは、第四話「怪談ライブにて」です。
とある怪談ライブで、怖い話を披露する怪談師たち。最後に壇上に上がってきたのは、客の女性。
その女性が話す怪談話に、恐怖するのは……?
得意げに怪談を披露していた怪談師たちが、今度は恐怖させられるという、どんでん返しが面白かったです。4人まとめて一気に怖ガラセ。さらに、心霊的な恐怖と、精神的な恐怖が両方味わえるという、大変お得な内容です。
1人の観客の視点で、物語が進んでいくのですが、その観客が一体誰なのかが、ラストにわかるというのも良かったです。
最後、亡くなったバンドマンの弟が、転びそうになったお兄ちゃんを支えるシーンがありました。
恨みが深そうだったけど、お兄ちゃんと怖ガラセで、少しは浮かばれたのかな、と思いました。
あいつがあれで、あれがあいつで
第五話の「恐怖とは」も良かったです。
人気俳優のスキャンダル現場を抑えようと、張り込みをする週刊誌の記者。そこへやってきた情報屋と、「何が怖いか」について話し合うが……。
「多分、こうなるだろうな」という予想の、さらに上を行くどんでん返しでした。
まさか、あいつがあれで、あれがあいつだったなんて。
どうしようもない結末が、虚しかったです。
続きが気になるので、一気に読み終わると思います。
続きはあるのかな? ドラマ化もありえそうです。


中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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