- HOME
- 『世界で一番いのちの短い国』、『紛争地の看護師』〜鈴木亮平のオススメ〜
「医師の喜多見ですぅ!」
一番好きな俳優は堤真一ですが、好きな俳優No.1は鈴木亮平です。『花子とアン』で心を掴まれ、以後、鈴木亮平の出ている映画やドラマはできるだけチェックするようにしています。そんな鈴木亮平が去年、『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』で喜多見幸太を演じる際に、参考にした本がこちらだそうです。
山本敏晴さん『世界で一番いのちの短い国』
西アフリカにあるシエラレオネ共和国に、国境なき医師団(MSF)として半年間派遣された山本医師の、汗と涙と笑いの実録。
白川優子さん『紛争地の看護師』
MSFとしてシリア、イエメン、イラクなど、世界各地の紛争地域に17回派遣された経験を持つ看護師の実録。
鈴木亮平がぜひにとおすすめするのだから、当時すぐ買いました。山本医師の本は、現地で実際に体験した、ヤバメなエピソードを中心に展開しています。あえてそういうヤバい話を集めているのかもしれませんが、冒頭のお産の事例は壮絶でした。
産気づいた妊婦と一緒に産院まで行く途中、車の中で突如出産。ところが赤ん坊を取り出した後、女性の出血が止まらない。車の中には医療器具がほとんどないため、やむを得ず、山本医師は握りこぶしに衣類を巻いて、そのまま腕を女性の膣に突っ込んで止血します。肘の手前くらいまで突っ込んだところで、ようやく止血ができたそうです。想像するだけで、お腹がギュッとなります。
さらに、こうした開発途上国では、患者がHIVに感染している可能性も高い。腕を体内に突っ込んでいる山本医師は、もしこれでHIVになったら、強制帰国です。幸い、感染はしておらず残ることができたのですが、そうしたリスクが常に隣り合わせにあるのが、シエラレオネの医療現場です。
またあるときは、町で女の子が売っていたヨーグルトを食べた山本医師。賞味期限は確認したものの、保存状態が悪く酷い腹痛に襲われます。慌ててトイレに行くと、そこにはおびただしい数の虫が…。寄生虫が身体の中に入ってくる危険性があるため、結局外でするしかないのです。
そんなハードな状況を、山本医師はユーモアたっぷりに書いています。
と思いきや、紛争地域が抱える問題も随所に出てきます。少年少女が戦場に駆り出されている様子など、山本医師が実際に見たことが淡々と書かれています。本の最後にある「あとがきに代えて」では、山本医師が考える国際協力のあり方について6つのポイントが記されています。
① 教育とその後のシステムの確率
② 現地の文化・風習の尊重
③ 悲惨さを誇張せず、彼らも対等の立場の人間として認識する
④ 子どもを助ける場合、ファミリー・プランニング、すなわちコンドームを配り、これを使うように、徹底的に現地の人々に教育することは大変重要である
⑤ お金を与えるのではなく、貸す
⑥ 無償で奉仕する人間がいる、ということを世界に広める
以上のことが詳細に書かれているので、たくさんの人に読んでほしいと思います。
警察にも怯える現地の暮らし
白川さんの『紛争地の看護師』では、タイトルにある通り、紛争地域の実態が、より詳しく書かれています。銃や爆弾を持って戦う人たちの中で医療行為を行うのが、白川さんの仕事です。
しかし戦闘員にはそんな事情は関係ないので、白川さんたちMSFのスタッフも襲撃に怯えることが少なくありません。
ある日、MSFのスタッフが滞在する施設に迷彩服姿の男たちが入ってきます。相手が何者かわからない以上、うかつなことはできません。結局彼らは警察で、検挙リストにのった人物を奇襲をかけて探していたそうですが、警察からも日々こんな重圧をかけられるなんて、たまったものじゃありません。
本書では、白川さんがなぜ看護師になり、国境なき医師団に参加したかの経緯も記されています。10年以上かけて、英語習得と海外での看護師資格をゲットし、念願のMSFに入ったというではありませんか。本当に尊敬します。
また、普通の幸せと、仕事との天秤に揺れる心も、赤裸々に書かれています。普通の生活をしていたいと思うけど、メールで派遣要請があれば行くしかない。もちろん任意だけど、派遣されることを選ぶわけです。
『紛争地の看護師』は初版が2018年、一方、『世界で一番いのちの短い国』は初版が2002年。どちらも出版から年月が経っており、山本医師の本に関しては20年前の本なので、現場の状況はかなり変わっていると思われます。
しかし、国際協力の根本的なあり方は今も変わっていないと思います。
鈴木亮平がオススメするだけあります。非常に勉強になりました。ありがとう、鈴木亮平。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
コメントを残す