- HOME
- 伊藤比呂美『女の一生』〜こういう大人になりたいもんだ〜
雑談の中で、「この本読んでみて」「この映画観て」と、誰かにおすすめすることがあると思います。
そのうち実際に読んだり観たりしてくれる人は、恐らく10人中1人いればいいほうじゃないでしょうか。雑談なので、大概は聞き流されてしまうことがほとんどだと思います。
が、私は人から勧められた本や映画は、80%以上の確率で実際に観ます。
特に本に関してはほぼ100%といっても過言ではありません。
「人から勧められた本をわりとすぐ読む」。これは数少ない自分の長所だと思っています。
そんな私が最近読んだのがこちらです。
『女の一生』伊藤比呂美
恩師が勧めてくれた本です。
「見習うべきところもあると思うのでご一読を」とのお言葉をいただいたので、ぜひとも読まねばと思い、急ぎ手に取った次第です。
伊藤比呂美さんは1955年、東京生まれの詩人です。
青山学院大学在学中に、詩誌『らんだむ』を創刊し、1978年に第一詩集『草木の空』でデビューしました。著書は多数。
恥ずかしながら私は伊藤比呂美さんを存じ上げなかったので、Wikipedia調べです。
さて、この『女の一生』は、伊藤比呂美さんのエッセイです。エッセイというより、お悩み相談です。
子供から大人まで、いろんな世代、性別の方からのお悩みや相談に、伊藤比呂美さんがバツバツ答えていきます。
この本のよいところは、お悩みが簡潔なところです。
「おかあさんがダサいTシャツとか買ってきます」12歳
「不倫しています。苦しい。でも別れられません」27歳
「リクルートスーツはどんなのを選んだらいいでしょう」18歳
その人の背景や詳細は一切明かされず、ただ悩み一つがぼんぼん出されていきます。
初版は2014年で、今から10年近く前なのですが、人の悩みは普遍だなとつくづく思わされます。
伊藤比呂美さんの回答もシンプルだけど、丁寧に相手に伝える感じが素敵です。
こういう大人になりたいもんだ。
私はまえがきの文章も好きでした。
『生まれてこの方、女であります。昔は若く、今は老いつつあります。女の苦労はたいてい経験してきました。自分であることが一生の命題でした。……』
素敵な本でした。恩師には感謝です。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
コメントを残す