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より先生の楽しいミュージカルライフ!:創立編

2023.07.26

【はじめに】Q.なぜあなたは演劇を続けているんですか?

東久留米でブロードウェイミュージカル

平日は公立中学校で教員として働きながら、週末は自ら立ち上げたミュージカル団体の主宰として活動する本村よりさん。9年間の活動の中で、13回公演を実施。累計3000人の観客を集めた。本業の傍らミュージカルを続ける理由とは? また、個人でブロードウェイミュージカルを上演するための必要なステップを聞いた。(第1回/全3回)

ミュージカル団体創立のきっかけ

普段のお仕事について詳しく教えてください。

公立中学校で音楽を教えています。教員歴は今年で13年目です。スタートは吹奏楽部の顧問でしたが、途中から7年間バドミントン部の顧問をしていました。その後、吹奏楽部の顧問に復帰して、今は埼玉県吹奏楽連盟西部地区の地区理事をやっています。音楽は自分の専門分野なので楽しい半面、必要以上に力を入れてしまうので大変なときもあります。休日にミュージカルの稽古があるのでバランスを考えないといけないのですが、なかなか難しいです。

教員として働きだして間もない2011年から舞台人としての活動を始め、2014年チャリティミュージカル団体『Project R』を設立されました。きっかけはなんだったんですか?

きっかけは東日本大震災です。被災地の悲惨な状況をテレビ越しに見たときは、本当にショックで言葉が出ませんでした。被災地の方々のために何かしたい。でも自分に何ができるんだろう? いろいろ考えた結果、やっぱり私には音楽しかないと。それで立ち上げたのが『Project R』です。私の想いに共鳴した仲間たちも集まり、2015年、東久留米でブロードウェイミュージカル『WICKED』を上演することができました。実費はすべて持ち出しの完全無料公演です。代わりに来てくださったお客様には、被災地への寄付金をお願いしました。その後も『レ・ミゼラブル』、『美女と野獣』など、ブロードウェイミュージカルのチャリティ公演を重ね、集まった寄付金は総額30万円。すべて被災地に送りました。

『WICKED』稽古場にて

実際に被災地にも行かれたんですよね。

はい。寄付金は被災した子供たちが集まるバレンタインデーのチョコ作りのイベントなどに活用されました。被災地の子どもたちが喜んでくれたことが本当に嬉しかったです。『Project R』を立ち上げた意味があったなと感じました。

活動中止からの新しい団体立ち上げへ

チャリティミュージカルでの支援活動は5年ほど続き、2019年に幕を閉じました。活動を休止した理由は?

被災地に寄付するという当初の目的も達成し、私の中で次に進むべきタイミングが来たと感じたんです。その気持ちを抱えたまま続けることはできないので、一旦ここでストップしようと決めました。それからまもなく新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。

コロナ禍では、「エンタメは不要不急」とされ、舞台は軒並み公演中止になりました。

私の周りの演劇関係者、音楽関係者たちのなかにも、コロナをきっかけに芸術活動を辞めてしまう人が大勢いました。それはすごく残念なことです。でも、続けたとしても仕事がないから仕方ない。だったら、そういう人たちが表現する場を自分で作ればいいと思い立ち、新たに『ミュージカル研究所R’s labo』を立ち上げたんです。

また「R」が入ってますね。どんな意味があるのでしょうか。

『Project R』もそうですが、“R”にはリバイバル、復活という意味が込められています。東日本大震災からの復興。そして今度は新型コロナウイルスからの復活。「labo」をつけたのは私自身、この団体を実験の場にしたかったからです。実験だから失敗してもいい。その失敗を糧にもっと成長していこうという前向きな団体です。ここでもありがたいことに、「力になりたい」と言ってくれる方が何人かいて。仲間の協力もあって、2020年に設立し、今年で3年目を迎えます。

両立のカギは気力と体力

Project R』と『R’s labo』、あわせると活動期間は9年です。本業とミュージカル団体を両立させるのは大変だったと思いますが、一番苦労したのはなんですか?

やはり、体力と気力を保つこと。元気じゃないと仕事もミュージカルも続けられないので、本当に健康第一です。 あと現実問題としてよく周りの方々に聞かれるのが、学校側から反対されないのか? ということです。私は活動をスタートさせたとき、隠さず堂々とやると決めていました。なので先生方にも生徒にも「今度ミュージカルをするから観に来てね」と普通に伝えます。多くの方は好意的に受け取ってくれますが、10人中一人は「えっ」という反応です。「なんでそんなことをしてるの?」と直接聞かれたこともあります。でも、応援してくださる方のほうが圧倒的に多いので、気にせず続けています。もちろん本業に支障をきたすのは論外。土曜日、稽古の直前まで仕事をしていることもよくあります。日曜日だけはゆっくりするというスタイルでやってきました。自分にはそのペースがちょうどいいんだと思います。たまに仕事が終わらず日曜日にも出勤することがありますが(笑)。

(第2回に続く)

PROFILE
演劇ライター 中村 未来

​中村 未来Nakamura Miku

千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。

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