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- 新国立劇場『尺には尺を』〜早くネタバラシしてあげて〜
『尺には尺を』を観に新国立劇場に行ってきました。
シェイクスピアです。
今回は同じくシェイクスピアの『終わりよければすべてよし』と交互上演。3時間近くある2作品を、同じキャストで演じるということで、相当大変そう。
2作品分の台本覚えないと出し、出番とか間違えないのかな? 裏方さんもどっちがどっちかわからなくなってミスったりするんじゃないかなというのは、素人の考えですね。プロフェッショナルってすごい!
『尺には尺を』はシェイクスピア作品の中でも、上演回数が少ないそうで(その割には結構名前を見るような)、こういう機会にぜひ観たい作品です。
(あらすじ)
舞台はウィーン。公爵ヴィンセンシオは、突然出立すると告げ、後事を代理アンジェロに託し旅に出る。じつはウィーンに滞在してこっそりアンジェロの統治を見届ける目的があった。というのもウィーンではこのところ風紀の乱れが著しく、謹厳実直なアンジェロが、法律に則りそれをどう処理するのか見定めようとしていた。
法律のなかに、結婚前の交渉を禁ずる姦淫罪があり、19年間一度も使われたことがなかった。アンジェロはその法律を行使し、婚姻前にジュリエットと関係を持ったクローディオに死刑の判決を下す。
だがクローディオはジュリエットと正式な夫婦約束を交わしており、情状酌量の余地は十分にあった。それを知ったクローディオの妹、修道尼見習いのイザベラは、兄の助命嘆願のためアンジェロの元を訪れる。兄のために懸命に命乞いをするイザベラの美しい姿に、アンジェロの理性は失われ、自分に体を許せば兄の命は助けると提案をする。
それを聞いたイザベラはアンジェロの偽善を告発すると告げるのだが、彼は一笑に付し、「誰がそれを信じる?お前の真実は、私の虚偽には勝てぬ」とイザベラに嘯く。
クローディオの命は?イザベラの貞節は?すべてはアンジェロの裁量に委ねられる。
もっとざっくり言うと、
超真面目な判事が、姦淫罪を犯した男を処刑しようとするが、とりなしを求めてきた妹に惚れ、よこしまな要求をする……というお話です。
判事アンジェロを岡本健一さん、修道尼のイザベラをソニンさんが演じます。
そういえば、夏に行ったソニンさんと宮本亜門さんとのトークショーで、今年はシェイクスピアをやるってことを言ってたような! これのことですね。
座席は2階席でした。このへん。
新国立劇場 中劇場の2階席ははじめて来たのですが、図を見ておわかりの通り、通路が少ないので真ん中のほうの席になると大変です。
すでに人が座っていると、自分の席にたどり着くまでに「すみません」を言いまくることになります。今回私がそうでした。
あと、前の席、隣の席との感覚が心なしか近い。狭い。なのでちょっと窮屈に感じました。
後半からたたみかけてきた
毎回思うけど、シェイクスピアとかこういう古い作品って、笑いどころが難しい。
冒頭のヴィンセンシオとアンジェロが真面目な話を長尺でやっているので、「これは真面目な話なんかな?」と思ってしまう。
要所要所でおかしなところが出てきても、笑っていいのかわからなくなる。海外では序盤からすごい爆笑なんだろうな。(予想)
最初はそんな感じで真面目に観ていたのですが、イザベラが兄に面会するところからちょっとずつ笑いが出てきました。
アンジェロから最低な要求をされるも、イザベラは断固拒否。兄もきっと妹の貞操を失わせるくらいなら喜んで処刑されるだろうと思い、監獄まで会いに行きます。
話を聞いた兄のクローディオは激昂し、「そんなことは絶対に許さない」的なことを言うのですが、そのうちすごくスムーズに「我慢してくれ」とイザベラに言います。めちゃくちゃな兄。この兄妹喧嘩が面白かった。
その辺からルーシオ(変な男)とアブホーソン(死刑執行人)、バーナーダイン(ずぼらな囚人)あたりの面白要員たちが、すごく振り切ったお芝居をしてきて、さらに面白くなってきました。
特にルーシオが、変装した公爵に対し、好き放題言いまくるところが良かったです。お腹から声が出ていた。
肝心のクローディオの運命ですが、なんやかんやあって処刑は免れます。
ただ、それを知った公爵ヴィンセンシオは、「この良いニュースをイザベラに伝えるのはあとにしよう」みたいなことを言って、しばらく知らんぷりした茶番を繰り広げるのです。
この茶番が長いうえに、イザベラは兄が処刑されたと思ってショックを受けて可哀想。「ヴィンセンシオ早くネタバラシしてあげなよ」と思いました。
ハッピーエンドではないけどまぁ笑える
ただ、この長い茶番にもちゃんと理由があって、結果的にアンジェロと元婚約者を復縁させ、さらにルーシオも自分が孕ませた女と結婚させることに成功します。
どちらも男サイドはまったく歓迎しておらず、無理やり結婚させているので、全然ハッピーエンドじゃありません。このあたりすごく荒唐無稽。
すべてが丸く収まったあと、ヴィンセンシオがイザベラに求婚と取れるようなことを言って幕が下ります。
「え、ひょっとしてあなた今求婚した?」という微妙な顔で振り返るイザベラが面白かった。
この結末については解釈が分かれるそうで、一般的には「無言の承諾」とされているとか(Wikipedia調べ)。
最初は何の話だろう? と思って観ていたのですが、後半からどんどん面白くなってくる素敵なお芝居でした。これ観ると、今度『終わりよければすべてよし』も観たくなる!
公演は1ヶ月やってるので、その間に観たいと思います。
余談ですが、チケットをもぎったあと、劇場スタッフの方が、公演チラシを渡してきますよね。何がやるのか見たいのでもちろん毎回受け取るのですが、今回もらったチラシは過去一枚数が多かったです。
数えてみると50枚。挟む方も大変だったろうな。
でもなにげなくもらうにしては多すぎる枚数だと思う。小言でした。ちゃんと目を通します。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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