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- 『TATSUMAKI 特命捜査対策室7係』〜もっとタツマキ見たかった〜
曽根圭介さんの『TATSUMAKI 特命捜査対策室7係』を読みました。
曽根圭介さんは『鼻』と『腸詰小僧』を読んだことがあります。
どちらもひねりのあるミステリーです。後半にかけてどんどん謎が明らかになっていき、どんでん返しが待っています。面白かったです。
やっぱり5係より7係ですよね
そんな曽根圭介さんが、こんなラノベっぽい表紙の本を書いているとは知りませんでした。
2014年の作品なので結構前ですね。
『小説現代』に連載されていたときはタイトルが「5係」だったそうですが、単行本にする際、「7係」になったそうです。やはり、謎めいた特命捜査対策室ならば7じゃないとなんか収まりが悪いです。
あらすじはこちら↓
未解決事件を専門に扱う警視庁特命捜査対策室に配属になった新人刑事・鬼切壮一郎。さっそく先輩女刑事・辰巳麻紀らメンバーとともに5年前の未解決失踪事件捜査にあたる。それは、男が突然姿を消し、刑事だった兄が容疑者となった事件だった。壮一郎は麻紀にイビられながらも真相を突き止めるべく奔走するが…。
主人公の鬼切壮一郎は、表紙のイラストはすっとした青年で描かれていますが、文章のイメージからいうと野比のび太です。
そして、タイトルロールである辰巳麻紀こと通称タツマキは、170センチ以上を超える高身長の女刑事。頭の回転が早く、大食い。気が強くて、鬼切を顎で使います。「突然やってきて捜査をしっちゃかめっちゃかにするから」という理由で、タツマキと呼ばれています。
この凸凹コンビが、5年前の未解決事件を再捜査するというストーリーです。
小柄で力もない鬼切が、偶然の産物により大泥棒を捕まえてしまったがために、特命捜査対策室へと栄転することになってしまった……というところから物語は始まります。
大体想像がつきますが、7係は警視庁の隅に追いやられており、所属する刑事たちは皆曲者揃い。その中でも最も発言権を持つのがタツマキさんというわけです。
タツマキさんのパートナーになった鬼切は、しばしば罵倒されながらも必死で事件を追いかけます。鬼切パートが多いので、タツマキさんの出番が思ったより少ないのが残念でした。しっちゃかめっちゃかにするところをもっと見たかったのですが、結構常識的な人だった。
いろいろな事実が複雑に絡み合う事件であるため、登場人物がとても多いのですが、そういう奴らよりも、私はタツマキさんの活躍がもっと読みたかったです。
という、ちょっと残念な部分もあったのですが、ラスト8ページは爽快ながらも、少しの後味の悪さと、それまで見えてこなかった鬼切くんの本当の姿が見えたようで、私は好きでした。
続編ありそうだな! と思ったけどない!!
10年近く経っているのでもうないかな……。
井上尚弥さんの『厨房ガール!』を読んだときも思いましたが、こういう続編ありそうでない作品に出会うと、なんとも言えない残念な気持ちになります。
登場人物に感情移入したところで終わっちゃうから寂しい。
次はシリーズものを読んでみようと思いました。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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