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IMMシアター『斑鳩の王子 ー戯史 聖徳太子伝ー』後編〜いろいろ衝撃的だった〜

2024.02.06

後編です。
(前編→IMMシアター『斑鳩の王子 ー戯史 聖徳太子伝ー』前編〜休憩なしで3時間?〜

IMMシアターの座席について

座席ですが、今回私はこのへんに座りました。ドセンです。

ここからだと、ステージから結構距離があるので、役者の顔はよく見えません。でも、真ん中だし、いいだろうと思っていたら、思わぬ落とし穴が。

IMMシアターの座席は、縦1列に並んでいます。千鳥ではありません。つまり目の前に、しっかり前のお客さんの後頭部が見えるスタイルです。段差はありますが、大柄の人が座ったり、髪にボリュームのある人が座ると、見えにくいというデメリットがあります。

今回私の前に座ったのは、大柄でパーマをかけたヘアスタイルの男性。Wパンチでした。

左右を見渡しても、私の前に座った男性だけ、頭半分、飛び出ている。ステージの3分の1、中央部分が全部見えない。

正直、最初の40分くらいは半端ないストレスでした。繰り返しますが、中央で芝居されても見えないんです。

しかし、これはもう文句言ったって仕方ありません。席運が悪かっただけだ。

「なぜ、縦一列の座席にしたんだ」と、憤慨しましたが、千鳥にすると、今度は左右が見えにくいというデメリットが生まれるので、どちらも一長一短である。ノンストレスで観劇するなら、やはり最前列で観るしかないですね。

でも、40分を超えたあたりから、さすがに慣れました。こういうお芝居なんだと思って観れば、なんてことはありません。ただ、これからIMMシアターに行かれる方は、この点注意いただけたらと思います。

あらすじ読んでもわからんけど大丈夫

3時間超大作の『斑鳩の王子 ー戯史 聖徳太子伝ー』、あらすじはこちら↓

7世紀、倭の国(今の日本)に仏教が伝来した。すると疫病が流行り、世は大混乱。時の豪族、仏教を支持する蘇我稲目と古来の神道を守る物部尾輿が対立し、この抗争は二代目の蘇我馬子と物部守屋へと引き継がれた。
その頃に現れたのが厩戸皇子。動物と話す奇人変人だと噂されていた。厩戸皇子は森で牝馬・黒駒を鹿の群れから救い、天迦久神に仏と仲良くできないかと直談判、礼碑阿姫と小須流目ら百姓たちの諍いをおさめるなど、飄々と我が道を歩んでいた。そんな折に敏達大王が崩御。権力を欲する穴穂部皇子(欽明天皇の子)は悲しみに暮れる后・炊屋姫を襲うが、弟の泊瀬部王子に阻止される。
崇仏派の用明大王が即位したことで、蘇我馬子の勢力が拡大。その用明大王もわずか2年で崩御し、炊屋姫が推古大王として即位する。
王位を狙う者、暗躍する者、出世を願う者――思惑のもとで跋扈する人々に対し、聖徳太子となった厩戸皇子は説いて回るが……。

漢字が多い。一発で読めない。

蘇我氏と物部氏とか、中学の歴史の授業で習ったはずですが、彼が何をした人たちなのかは、まったく覚えていません。これが、聖徳太子の半生のどの部分を切り取った物語なのか、歴史に詳しい人、誰か教えてください。

とはいえ、あらすじを読んで意味が分からなくても、別に問題ありません。物語は勝手に進んでいくので、シーンごとに起こっていることを楽しむスタンスのお芝居です(個人の感想です)。

3時間超えになった原因

序盤は、比較的普通に物語が進んでいきます。世間の混乱には目もくれず、マイペースに生きている厩戸皇子(明石家さんま)。もちろん、聖徳太子は、全編関西弁です。

森にいる鹿と触れ合うシーンは、ほのぼのとしていて良かったです。人間が四足歩行動物を演じると、絶対に面白いです。

それから少しずつ、政治の混乱へと巻き込まれていく聖徳太子。

なんやかんや色々あるのですが、ひとっ飛びして問題のシーンです。今回のハイライトとも言える。

さんまさんと温水さんと中尾くんの3人のアドリブシーンが約30分続きます。

おまけに今回のお芝居は一人何役も演じるので、もはやこのシーンが誰のなんのシーンだったのか思い出せない。

ただ、覚えているのは「◯◯の朝は早い……」というさんまさんのセリフから始まる寸劇を、50テイク以上やっていたことです(体感)。何回やっても中尾くんのOKが出ないので、何度もやり直しを命じられます。

最初の1,2回は「ははは(笑)」という感じで見ていられたのですが、4,5回めくらいになると「ん? まだやるのかな?」と思い始め、10回を超えたあたりから「これはそういうやつなんだ」と諦めて、また笑い始めます。めちゃくちゃしつこくて、もういいよ! と言いたくなるけど、面白いから不思議。テレビで散々芸人と絡むのを見てきたからか、いつまで続くかわからないアドリブシーンも楽しく見ていられました。

ただまぁ、3時間超えのうち、30分をアドリブシーンに費やしていたので、これがなかったら2時間半。攻めた台本です。

衝撃だった虫のシーン

さて、ストーリーは進み、主要メンバーたちが次々暗殺されると、「悪いやつは地獄に行って虫になる」というセリフを残し、暗転。すると、次のシーンでは、主要メンバーたちが虫を模した全身タイツで現れます。問題のシーンその2,虫の場面です。

ここもコントのようなアドリブ芝居が続きます。本編とはまったく関係ないお遊びのシーンです。さんまさんがメンバーに話しを振って、展開していくのですが、禁断の吉本興業いじり、ダウンタウン松本いじりも繰り出したので、驚きました。さすが、大御所は違います。名前出したくらいですが、一瞬客席がざわついたのがわかりました。

なお、帰り道見知らぬリピーターの方の話しを盗み聞きしたところ、虫のシーンに関しては「3,4割くらい、前回と違う内容」だそうです。毎回ちょっとずつ変えてるんだな。

そしてメンバーたちが散々困ったのを見届けたあと、「こういうのが楽しいやろ?」というセリフをきっかけに暗転。

なぜかこのタイミングで、『IMMシアターへようこそ』という文字がロゴと共に浮かび上がります。

突然すごい終わりそうな感じを出してきましたが、全然そんなことはなく、このあと普通に物語は続きます。

本当に踊るさんま御殿

今回のお芝居では、ダンスのシーンも随所にありました。

後半で、キャスト全員で踊るシーンがあったのですが、さんまさんが踊ってる! あんまり踊ってるの見たことないので、珍しいなと思いました。リズムに乗ってる様子が可愛らしかった。

でも、なんでみんなで踊ったのかは、やっぱり思い出せない。

ふざけ倒したあとに泣ける展開

いよいよクライマックスシーンです。

中尾くん演じる、山背大兄王(やましろのおおえのおう)が勢力争いの中、敵に討たれて命を落とします。

山背大兄王は、聖徳太子の息子。じつは、聖徳太子は予知能力によって、山背大兄王が討たれることを知っていました。が、あえて助けませんでした。というのも、もしも助けたら、その後、山背大兄王がどんどん悪い方向へ落ちて行くことを知っていたからです。

これ以上、息子が悪いほうに行かないよう、断腸の思いで見捨てたわけですね。

息子の亡骸を抱きしめながら「お前が一番大切や」と言って泣くシーンは、ホロリと来ました。30分のアドリブや、虫のシーンをすべて帳消しにするようなシーンだったと思います。さんまさんは、本当にお芝居が上手いな。

とっとと帰らなければ!

さすがにトイレ中座は多かった

最後は、聖徳太子と黒駒(馬)が、富士山頂に登って幕でした。

富士山への道中は客席に降りて歩いていくのですが、その間に客いじりもあって楽しかったです。近くだった人いいな〜。

エンディングのあと、一人ステージに残ったさんまさんから、感謝の言葉とともに「私が言うのもなんですが、とっととお帰りください(笑)」という一言をもらって感激でした。「あんたが言うな」のやつです。

さすがに今回は、トイレ中座をしている観客をたくさん見かけました。3時間あるから行きたくなっちゃうよね。でも、3時間あると「一瞬くらいいいか」という気持ちにもなります。むしろ、休憩が入った場合、また女性用トイレ前に長蛇の列ができるのを考えると、むしろ休憩なしで、自由にトイレ行くパターンのほうがいいのでは? というか、それが狙いだったのでは?? すべて、さんまさんの思い通り……?

長々と書きましたが、じつは今回、観劇メモを保存し忘れるという、痛恨のミスをしています。さっき気付きました。本当はもっと書くことあったような気がするけど、いいか。

こういうのも楽しいなと思います。

PROFILE
演劇ライター 中村 未来

​中村 未来Nakamura Miku

千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。

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