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- 澤村伊智中編集『さえづちの眼』〜まさかこんなことに〜


最近、借りて読んでる澤村伊智先生の本。
↓これらに続き、
今回は『さえづちの眼』です。
タイトルからわかる通り、比嘉姉妹シリーズ。
ぼぎわんに始まり、ずうのめ、ししりばと、絶妙に聞いたことのない響きのタイトルは、一体どうやって思いつくのだろうか。
シリーズですが、貸してくれた真島さんによると、時系列がバラバラなので、どこから読んでも大丈夫だそうです。
こちら表題作のほか、2篇を収録しています。
鎌田のおっさんは最後までいい人だった
一本目は『母と』。
真琴のもとに助けを求めにやってきた杏という少女。彼女が暮らす民間の更生施設・鎌田ハウスに「ナニカ」が入り込み、乗っ取られ、結果的に住人たちがおかしくなってしまったらしい。杏を救うために真琴と野崎は、埼玉県にある鎌田ハウスへと向かう。
更生施設を切り盛りしていた鎌田のおっさんは、この家に近づいてくる悪いものと夜な夜な対峙していました。ところが、ある日、ものすごい力を持ったヤツが現れ、ついにやられてしまうおっさん。
「鎌田のおっさん、絶対に怪しい」と思いながら読んでいたのに、最後までただの善良な人でした。悲しい……。
何者かに乗っ取られれた鎌田ハウスを救うために、比嘉真琴ちゃんがやってきます。
真琴ちゃんは、すごい霊能力者だと思うのですが、メンタルが弱いのか、結構負ける印象。
でも最後はちゃんと勝ちます。
なお、こちらは、作中に壮大な仕掛けがあります。
読み進めると、終盤で「ん???」となって、もう一回読むことになると思います。
2本目は『あの日の光は今も』
1981年に大阪府東区巴杵町で2人の少年がUFOを目撃した、巴杵池(はぎねいけ)事件。
母とともに小さな旅館を営む昌輝は、かつてUFOを目撃した少年のうちの一人だった。
事件も遠い記憶になり始めたころ、湯水と名乗るライターが事件の記事を書きたいと旅館を訪ねてくる。昌輝は湯水と宿泊客であるゆかりに向けて、あの日何が起こったかを語り始めるが――。
UFOが出てきます。
そして『ずうのめ人形』などに登場する料理研究家の辻村ゆかりが出てくるのですが、私はこの辻村ゆかりさんのことを一切忘れていました。
そのため、この話が誰視点でどうやって読めばいいのか全然わかりませんでした。全員知らない人が出てくるけど比嘉姉妹は……? と思いながら読んでしまったのがよくなかった。あんまり頭に入ってこなかった。
真島さんによると、辻村ゆかりは「性格の悪いオカルトマニア」らしいのですが、タワマンの上層階に住んでたことしか思い出せない……。
もう一回ちゃんと読んでみたいと思います。
そして最後が表題作の『さえづちの眼』です。
郊外にある名家・架守家で起こった一人娘の失踪事件。「神隠し」から数十年後、架守の家では不幸な出来事が続いていた。何かの呪いではないかと疑った当主は、霊能者の比嘉琴子に助けを求めるが――。
数十年前、名家・架守家に住み込みで働いていた家政婦さんが、上司宛に書いた手紙から始まります。
最初はとても良いお家で、ご家族にもよくしてもらっているという何気ない内容でしたが、
次第に、この家で起きる不可解な事象について相談する内容へと変化していきます。
ざっくりいうと、大蛇的な化け物が現れるというものです。
手紙は唐突に終わり、一気に数十年後にスキップ。
名家・架守家は存続してはいるものの、事業は傾きかけていました。
その原因が、何か悪いもののせいではないかと睨んだ一族の一人が、救いの手を求めたのが比嘉琴子さんです。
架守家が没落していく原因を琴子さんがあっさり突き止めて一件落着……かのように見えましたが、ここからもう一展開あります。
結局、化け物騒動は、佳枝さんという女性が、娘を古いしきたりの家から逃がすために仕組んだことでした。旧時代的な考え方の架守家に、嫌気が差していた佳枝さんは、架守家が没落していくのは自分の呪いの力だと思い込みます。
しかし、琴子さんに言わせると、佳枝さんにそんな力はありません。「お祓いするなら今のうち」みたいなことを佳枝さんに忠告しますが、聞き入れない佳枝さん。
その結果、佳枝さんは、逃がした娘に、永遠に呪い殺されるという地獄を味わわされることになるのでした。
え!? となりました。一芝居打って娘を逃がしたのに、その娘から恨まれるとは。
しかもその理由が、大蛇の嫁になった娘(ここも驚きだった)の子供の山蛭(やまびる)を踏み殺したからでした。
たしかに、山登りしているときに、山蛭を踏んづけていたけど、あれが娘の子供だなんて、気づくのは無理なのでは?
澤村伊智先生の作品は、世間体に縛られる女性に優しいというか、悩む女性を救う系の展開が多いのですが、これは真逆でした。まさかこんなことになるなんて。
琴子さんも、どうして佳枝さんのことを助けてあげなかったんだろう。
わかりやすくバッドエンドなので、気になる方は読んでみてください。


中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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