- HOME
- ミュージカル『ジキル&ハイド』〜一緒にハングルを勉強した思い出〜
3階席はオケピがよく見えるぞ
ミュージカル『ジキル&ハイド』を観てきました。
気づいたときには一般発売のチケットはすでに完売しており諦めていたのですが、なんと追加公演があるというではありませんか。1月21日、待ち合わせ場所に向かう途中の新宿三丁目駅のホームで、チケットを取りました。電波状況が悪い中、どうにかこうにかゲットすることができました。良かった。
場所は東京国際フォーラム ホールCです。
場内はすでに人でいっぱい。
千鳥格子はすべて人です。
人気作品の場合、S席や複数席連番などは取りにくい気がして、最弱の席を選ぶようにしています。今回はB席にしました。3階席までエレベーターで上がっていきます。
このへんです。
座席からは舞台がこんな風に見えます。
ステージまで距離はあるので、オペラグラスがあると良いと思います。周りでは持参している人がちらほら。ただ、ステージからは遠いですが、この席からだとオーケストラピットが丸見えになるので見たい人にはオススメかもしれません。
二重人格の天才科学者による連続殺人事件
さて、ミュージカル『ジキル&ハイド』はイギリスの小説『ジキル博士とハイド氏』をもとにしたブロードウェイ・ミュージカルです。
1990年にアメリカで初演。その後トニー賞の最優秀ミュージカル脚本賞・最優秀ミュージカル主演男優賞・最優秀衣裳賞・最優秀照明賞部門にノミネートされた名作。日本では2001年に初演、以来、数年ごとのスパンで上演され続け、今回は2018年以来5年ぶりの公演です。
追加公演のキャストは、
ジキル/ハイド 柿澤勇人
ルーシー 真彩希帆
エマ 桜井玲香
アターソン 上川一哉
でした。主演のジキル/ハイドはWキャストで、柿澤さんは今回から加入。もう一方の石丸幹二さんは今回で最後になるそうです。世代交代ですね。
あらすじ
舞台は19世紀のロンドン。天才科学者のジキル博士は、「人間の善と悪の両極端の性格を分離できれば、人間のあらゆる悪を制御し、最終的には消し去ることが出来る」という仮説を立て、ある薬を作り上げた。人体実験のためジキル博士は自ら薬を飲むが、現れたのはジキルの悪意=ハイド。薬によってジキルから変身したハイドは、恨みを抱いていた人間たちを次々惨殺していく。
二重人格者によるホラー作品です。
柿澤勇人さんは以前『スッキリ!!』で、ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』の劇中曲を歌っているのをちらっと見たことがありましたが、舞台で見るのは多分初めてです。てっきりジキル博士は、中年のマッドサイエンティストだとばかり思っていたのですが、設定では若い科学者なんですね。そういう意味で柿澤さんはぴったりだと思いました。若くて愚かな科学者がよく似合っています。
K-POPにハマり、ハングルを勉強しました
そしてヒロイン・エマ役の桜井玲香さん。じつは私は今回桜井さんを見るのがとても楽しみでした。というのも、Eテレの『テレビでハングル講座』を見ていたとき、生徒役で出演していたのが桜井さんだったのです。私は当時、K-POPのSEVENTEENにハマっており、それが理由でハングルを勉強していました。桜井さんと共にハングルを学んだのはいい思い出です。
歌は今回初めて聴きましたが、上手でした。残念ながらステージまで遠すぎて表情までは確認できませんでしたが、立ち振る舞いも可愛かったと思います。会場では桜井さんグッズを身に着けたファンの方もたくさん見かけました。大人気です。
もうひとりのヒロイン、ルーシーは真彩希帆さんでした。元宝塚歌劇団雪国トップ娘役の方だそうです。ルーシーの妖艶な部分と天真爛漫な部分の演じ分けが上手くて、とても素敵でした。
第一幕 第5場で「どん底」というパブのシーンがあるのですが、ルーシーの歌もいいし、何より派手。第一幕は、ハイド氏になるまでの助走が結構長いので、そういう意味でも「どん底」は印象に残ります。そこでジキル博士と出会ったルーシーは彼に惹かれていくわけです。これがいけなかった。
で、いよいよ第6場でジキル博士がハイド氏に変身します。
パンフレットは早めに来て買ったほうがいい
ここで作品屈指のナンバーである『時が来た』の歌唱です。
ジキル博士の熱唱がホールCに響き渡ります。このあととんでもないことになるとも知らず。
歌い終わり、「なんかフラフラするなぁ、頭が痛いなぁ、恍惚な気持ちになるなぁ」と言って客席を笑かしたと思ったら、唐突に照明が変わり、舞台の雰囲気が一変します。ハイド氏の登場です。
ジキル博士の悪意を抽出して生み出されたもう一つの人格であるハイド氏は、やりたい放題の極悪人。柿澤さん、喋り方も歌い方も歩き方も全部違う。二面性を出すために、わざと前半の芝居抑えてたのかな? ってくらい違う。
そして、ついに第一の殺人が発生します。犠牲者となったのは理事会でジキル博士を散々侮辱した司教。炎に焼かれて殺されます。本物の火の演出で熱さが3階席まで届いたような。ここで第一幕は終了です。
30分の休憩時間を使って、1階のロビーまで降り、パンフレットを買いに行ったのですが、長蛇の列。ギリギリ5分前くらいに買って、ダッシュで席まで戻りました。やっぱり早めに来て買うのが一番だと思った。
ルーシー、ウシロー!
第二幕は、冒頭からハイド氏による殺人が行われます。次々に殺されていく理事会のメンバー。第一幕のゆるっとした空気とは打って変わって、緊迫感のある芝居とナンバーが続き、盛り上がっていく。「事件、事件」の歌がよかった。
ちなみに、ジキル博士とハイド氏は同一人物であるはずですが、人格が変わると人相まで変わるのか、誰も同じ人間だと気づきません。二人と直接対面しているルーシーでさえ、別の人間だと思っています。
また、ハイド氏が事件を起こしている間、ジキル博士は眠った状態なので何も知りません。なので人格が入れ替わったときに驚愕します。ハイド氏をなんとかしないとヤバい。そう思うけど、どうしたらいいかわからない。そして魔の手が、ルーシーに迫っていく。
ここからのルーシーの部屋のシーンは、ハイライトですね。
「その部屋を急いで出て、新しい生活をしてほしい」というジキル氏からの手紙を読んで、旅に出る決意をするルーシー。このときルーシーが手紙を音読するのですが、読み方がたどたどしいのは、おそらく読み書きがそんなにできないという設定なのだと思います。
海外公演の中には、読み書きができないルーシーに変わって、アターソンが代読するバージョンもあるそうです。面白いですね。
ちなみにこのシーンで、「僭越ながら贈り物をします」というメッセージと共に何かが贈られていたのですが、残念ながら遠くて見えませんでした。お金だったのでしょうか?
新たにはじまる人生の希望を高らかに歌いながら、トランクの中に荷物を詰め込んでいくルーシー。死亡フラグがすごい。
そんなことを考えていたら案の定、雷の音と共にハイド氏のシルエットが。ルーシー、ウシロー! と叫ぶことも叶わず、無残にも殺されてしまうルーシー。もう少しで新しい人生がはじまるはずだったのに……だから歌ってる場合じゃないって言ったのに……。
この事件をきっかけに、自分の中に潜む悪意(ハイド氏)に絶望したジキル博士。
もう二度と事件を起こさないために、必死にハイド氏に抗います。この<対決>シーンでは、柿澤さんがジキル博士とハイド氏を交互に演じます。すごい迫力でした。
そしてついに、ハイド氏を抑え込むことに成功。ジキル博士に平穏な日々が戻るのです。
と思いきや、そうは問屋が卸しません。エマとの結婚式で再び現れたハイド氏。暴走を止めることができず、最後は親友のアターソンによって銃で撃ち殺されてしまいます。そしてエマの膝の上で絶命し、幕が下ります。最後のエマが、女神のように神々しくてよかったです。桜井さんお疲れ様でした。
なお、長蛇の列に並んで購入したパンフレットがこちらです。
紙がなんかすごい上質なさわり心地。そして箔押しの表紙。いいですね。これぐらい気合いが入っていると、パンフレットも買ったかいがあります。
中身はキャストさんの対談が中心でした。欲を言えば、衣装さんと照明さんら裏方さんのインタビューも入れてほしいです。欲を言えば。
大変良い舞台でした。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
-
ありがとうございます!
>>ワイルドホーンの音楽がすごく(いい意味で)J-POPに近い感じがするなと思います。
こういうご意見とても勉強になります。さすがより先生!!
ジキハイ観劇レポートありがとうございます!
私も好きな作品で、よくコンサートなどでもジキハイの曲が使われるとアガります!ワイルドホーンの音楽がすごく(いい意味で)J-POPに近い感じがするなと思います。
ルーシー歌ってる場合じゃない!は笑いました!笑