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ミュージカル『スウィーニー・トッド』中編〜発想が怖いけどキュートな不思議〜

2024.03.19

『スウィーニー・トッド』中編です。

前編はこちら。

次回は後編と言っていたのに?
長くなったので、前編、中編、後編に分けることにしました。

舞台からの距離よりも、目の前の頭のほうが気になる

今回私が座ったのは3階席のこのへんです↓

3階席は舞台から遠いけど、傾斜が強いので前の人の頭がそんなに気にならない。個人的には舞台からの距離よりも、前の人の頭のほうが気になります。すべてを解消するには最前列で観劇するしかない。

そして今回は生オーケストラです! 2007年もそうだったか? 覚えていません。3階席からだと、オーケストラピットが丸見えです。それは少し嬉しいポイントかもしれません。

いよいよ幕が上がります。

登場人物全員イカれてるので、むしろPOP

『スウィーニー・トッド』のざっくりあらすじはこちらです↓

19世紀のロンドン。
理髪店を営むンジャミンは、悪徳判事のターピンに妻と娘を取られたうえ、無実の罪で島流しに。
15年後、脱獄したベンジャミンは、スウィーニー・トッドに名前を変えて街に戻って来るも、妻は自殺、娘は判事の養女となり幽閉されていた。
トッドは、ターピンに復讐するため、とんでもない行動に出る。

この「とんでもない行動」というのが、理髪店にやってきた客の喉をカミソリで切って殺し、1階でパイ店を営むミセス・ラヴェットが、その人肉を使ってミートパイにしてしまうというもの。サイコです。

猟奇的だし、舞台も空気感も重々しいけど、登場人物全員イカれているせいか、なぜかPOPに映る。曲もストーリーも面白くて、好きです。

余談ですが、理容師の友達に会うと必ず「スウィーニー・トッドだね!」と言ってしまいます。同じ友達に複数回言っている気がするので、いい加減止めないといけません。

変な家INロンドン

陰鬱なオープニングが始まると、爆音とともに市村正親扮するトッドが登場。血まみれ白衣です。

一幕は、トッドがロンドンのフリート街に戻ってくるところからスタート。

オーストラリアに島流しにされていたトッドは、脱獄して海を漂流中、アメリカの水兵アンソニーに助けられます。この「海を漂流中」のイメージがいまいちできないのですが、ボートで脱獄していたってこと? 

ピュアで真っ直ぐなアンソニーは、どう見ても怪しいトッドに対しても、とても親切に接してあげて優しい。

トッドの理髪店は家の2階部分にあり、15年ぶりに戻ってもそこは空き家。1階で“ロンドン1不味い”パイ屋を営むミセス・ラヴェットによると、「事故物件だから誰も寄り付かない」とのこと。事故物件の当事者はもちろんトッドで、ラヴェットから聞かされた不幸な家族の顛末はすべて自分のことなわけです。

そしてここで、ラヴェットから、妻であるルーシーが殺されたことを聞かされます。おまけに娘は、自分を島流しにしたターピン判事が養女にしている。

こんな目に遭わされたら、もう復讐するしかありませんよね。そこでミセス・ラヴェットの協力を得て、理髪店にターピンをおびき寄せて殺す計画を立てます。

前回も思ったけど、大竹しのぶの歌がとても良いですね〜。すごく上手いってわけじゃないのに、めちゃくちゃ聞き取りやすくて、なおかつ楽しい。ミセス・ラヴェットのナンバーは全部好きです。

で、タービン判事を店におびき寄せることに成功したトッド。あっさり復讐完了かと思いきや、その瞬間、間の悪いアンソニーがやってきて、千載一遇のチャンスを逃します。

結局トッドは、この失敗で自暴自棄になって殺人鬼になってしまいます。罪深いアンソニー。

ところで、タービン判事の付き人ビードルを、お笑い芸人のこがけんが演じている。しかもシングルキャスト。『バンズ・ヴィジット』でシティな歌い方が素敵だったこがけん。まさかまたミュージカルで見かけるとは。

さて、なぜアンソニーが、最悪のタイミングでトッドの店を訪れたかというと、ジョアンナに一目惚れしたことを報告するためです。これにはトッドもブチギレてOK。

改めて、一目惚れしたそのシーンを見ると、アンソニーめちゃくちゃ簡単に恋に落ちてて面白かったです。遠目で見た美少女に一方的に好意を抱くなんて、なんて軽い男なんだ。

ジョアンナのソプラノ歌唱がとっても素敵だな〜と思っていたら、演じた熊谷彩春さんは、『レ・ミゼラブル』で最年少コゼットを演じられた方なんですね。どうりで上手なわけだ!

絶対にルーシーなわけないキムラ緑子

そして、私の大好きな乞食女も、始まってすぐに登場。突然曲調が変わって、乞食女ターンになるのがいいですよね。今回はマルシアさんが演じられています。

盛大なネタバレをしてしまうと、トッドの妻のルーシーが、じつはこの乞食女です。美しかったルーシーの面影はまったくありません。

初演時に乞食女を演じたキムラ緑子さんは、動きもセリフも独特で、「絶対ルーシーではない」と思わせるお芝居でした。

一方、今回のマルシアさんは、頭はおかしくなってるけど、どこか可愛らしさが残っている感じ。良い伏線になってるなと感じました。

物語の重要人物の一人であるトバイアスは、今回加藤諒くんでした。武田真治トバイアスも見たかったけど、キャラクター的には加藤諒くんぴったり。すっとぼけた感じが可愛かったです。

発想が怖いけど、キュートなの不思議

さて、アンソニーのせいで作戦失敗したトッドは、すっかり自暴自棄に。

そこへやってきたのは、ベンジャミンだった頃の自分を知っている人物。脅迫されたトッドは、思わず殺害してしまいます。これが第一の犯行です。

トッドの凶行を知ったミセス・ラヴェットも共犯に。

それどころか、「最近はパイに使う肉が高くて手に入らないから、人肉使うのはどう?」と狂気的な提案。こうして2人の共同経営が始まっていくのでした。

大竹しのぶのミセス・ラヴェットは、本当に悪意がないから面白いです。トッドと自分のためなら、簡単に犯罪者になれる極悪なのに、とてもキュート。

第二幕は、後編に続きます。

PROFILE
演劇ライター 中村 未来

​中村 未来Nakamura Miku

千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。

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