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- 『BLUE GIANT EXPLORER』6巻〜バク転の思い出〜
なんでステージから下りないんだろう
『BLUE GIANT EXPLORER(ブルージャイアント エクスプローラー)』6巻が発売されました。表紙、誰!? な始まりです。
第一部『『BLUE GIANT』から愛読していますが、そういえばレビュー書いたことあったかな? と思ったら書いてました。
『2020年は飛躍の年に! 背中を押してくれるマンガ10選』の中のひとつです。
よく10個も選んだなと思いましたが、我ながらこの10作品は良いと思います。今年の年末にも同じテーマで新たに選んでみようかと思いました。
さて、前巻のBLUE GIANT EXPLORER は、大が先生をしているサックス教室の発表会が始まるというところで終わっていました。6巻は、その続きからです。
5巻の発売がちょっと前だったので、内容を忘れかけていましたが、そうだこのサックス教室のスティーブ先生がイカした人だったと思い出しました。
どうやらみんなから尊敬されているらしいスティーブ先生。でもしばらく名前しか出てこない。そしてようやくご本人登場したときに、思ったとおり尊敬に値する人物だということが一瞬でわかって、大が涙ぐむ…みたいなシーンがあったような気がします。
石塚真一先生は、キャラクターへの期待のもたせ方が、いちいち上手ですよね。「こいつ、絶対何かあるな」と思わせて、後々爆発します。善良な人も、そうでない人も。発表会がはじまってすぐ、ステージから下りない大に対し、「彼がずっと横にいるのか!?」と心の中でツッコむスティーブ先生が面白かったです。たしかに、なんでいるんでしょう。
しかしそこは、大プロデュースの発表会ゆえで、直接指導やアドバイスすることで、その人が自信を持って、最大のパフォーマンスを発揮できるようサポートしてくれているのです。
たしかに、そばに先生がいるのといないのとでは、安心感がまるで違います。当然パフォーマンスにも影響が出ます。
バク転教室の思い出
思い出すのが、8年ほど前の取材です。バク転教室に行って、1日でバク転に挑戦! という雑誌の企画でした。当時、話題だったバク転教室。体操未経験の大人でも、バク転できるようになるという主旨の教室でした。
通常は普通の体操教室で、マットや平均台などで子供や学生たちが習い事として通っているのですが、その一角を使ってバク転教室は開かれていました。生徒さんたちは、通常数回に分けてバク転を学ぶので、「一日でできる」という縛りは本来ありません。しかし、コツをつかめば一日でできる人もいるとか。というわけで、私が体験することになったのです。
バク転の練習だというのに、なぜか私はロンTにデニムスタイルで出かけていきました。どうして着替えを持っていかなかったのかはわかりません。現地で借りられるとでも思ったのでしょうか? ともかく到着して、「その格好のままやるんですか?」と先生から聞かれたとき、しまったと思ったのは覚えています。先生もこいつやる気あるのか?と思ったはずです。
さっそくバク転練習がスタートです。
バク転の練習は何段階かに分かれており、最初は真上にジャンプする練習、それができたら、次はジャンプして後ろのマットに座る練習、と、バク転の際の姿勢や目線を学んでいきます。そしてあっという間に、補助ありで回ってみましょうの段階に入ります。たしか、先生二人がかりで左右から補助をされながら後ろに飛びます。飛べました。トランポリンの上で行うので、跳躍力が増した状態になり、補助ありならなんとかバク転することができたのです。慣れてきたら、補助をゆるくしていって、1人で飛べるように練習します。足元も踏み込むのは普通のマット、着地はトランポリンという状態です。
そのうちに、先生の補助がなくなり、なんとか1人でバク転できるまでになりました。ただし、補助がなくなったとはいえ、いつでもフォローできるように、私のすぐ真横、視界に入った状態に先生がいます。なんとなく形になったから、いよいよ撮影です。
先生に写り込まない部分まで離れてもらったのですが、すると、たちまち形が崩れて失敗してしまいました。何度やっても、先生が真横にいないと失敗します。もう一度先生に横まで来てもらい、やってみるとできる。ところが、離れてしまうとできない。
たとえ手を出していなくても、先生がそばにいるのといないのとでは、安心感がまるで違うのだなと実感しました。何度も試みて、なんとか先生が離れた状態でバク転することができましたが、本当にギリギリの一回だけでした。今思うと、なぜこの企画を引き受けたのか、自分でもわかりませんが、若さゆえの度胸があったのだと思います。「絶対にやらなきゃ!」というアドレナリン放出状態だったことも成功の要因だったはずです。
取材が終わって、帰っている途中、編集さんが「もし中村さんができなかったら、私やろうと思ってたんです」と言い出しました。なんでも、学生時代、陸上部で棒高跳びの練習の一環としてバク転を習得していたそうな。それ今言います!? と割と大きな声が出ましたが、ともかく自分でできてよかったです。あと先生のサポートの力は絶大なんだという話がしたかったんです。
ここに蛇喰夢子がいてくれたら…
BLUE GIANTに話を戻して、大プロデュースの発表会は、大成功で幕を閉じます。
そういえば、ずっとピアノ伴奏をしているアントニオ。どうやって出会ったんだっけ…? 5巻を読み返す必要があります。後半は、バンドのメンバーを探すために、ヒューストンのジャズバーに飛び込みます。そしてゾッドと出会うのです。表紙の男です。ドラマーです。
見るからにデカくていかつい。ぶっきらぼうで、大のことを微塵もリスペクトしていません。これでドラムが下手くそだったらただのコントですが、そんなはずもなく、圧倒的なドラムテクニックを持った凄腕です。アントニオとセッションして勝負しますが、実力を出し切ることのないまま立ち去ります。
これまでは、なんだかんだ、一回演奏すれば「こいつ、やるな」と言って仲間になる流れでしたが、実力を隠したまま退場するのは新しいパターンです。
ゾッドに相手にされなかった大とアントニオは、彼のいるポーカーハウスまで出向きます。そして、まさかのポーカー対決です。初心者なのに勝てんのかい、と思ったところで6巻終了。結果は次巻へ持ち越しです。まさか、最後の引きがカジノとは。ここに蛇喰夢子がいてくれたらと思わずにはいられません。
大がつんつるてんにならないことを祈るばかりです。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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