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『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』〜うかつに聞いてはいけない〜

2023.05.18

今回も不穏なスタートだった

『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』を観てきました。
※この記事にはネタバレがあります。

場所は「THEATER MILANO-Za」(以下ミラノ座)。
4月にオープンしたばかりの東急歌舞伎町タワー内にある新劇場です。

ロッテの紗々みたいな独特の外壁が目印です。

前回観劇した『unikurage』では、うっかり日にちを間違えて大慌てという大失態をおかしました。しかし今回は今回で、直前の用事が思ったより押してしまい、時間ギリギリになるという事態に。雨の歌舞伎町を猛ダッシュする羽目になってしまいました。

はじめて行く歌舞伎町タワーも周りを見る余裕などなく、エスカレーター目掛けて突き進み、汗だくになりながら劇場のある6階へ。

無事にチケットを見せて、入場。

一心不乱に客席を目指し進もうとすると、劇場のスタッフさんに呼び止められました。

「こちらよかったらお持ちください!」

こけら落とし特典? なのでしょうか。エヴァンゲリオンカラーのペットボトルホルダーをいただきました。ほかにもカラーバリエーションがあったのですが、急ぎすぎていたので、一番手前にあったものを取りました。初号機っぽい!

なんとか1分前に着席。観劇マナー的に、ギリギリの入場はあまり好ましくありません。

トイレなどをすませ、遅くとも10分前には席について穏やかな気持ちで開演を待ちたいものです。私は今回ギリギリだったため、汗だくのまま観劇がスタートしました。

両隣がいないバルコニー席だったのが不幸中の幸いでした。これで両隣がいたら芝居中、汗を拭く動きが鬱陶しかったはずです。

しかし、間に合ったから良しとはなりません。

ミラノ座のバルコニー席は、ちょっと高めに設置されているので足が宙ぶらりんになります。富士急ハイランドの「ええじゃないか」みたいな感じです。

そのため、希望者にはフットレストを用意してくれるのですが、ギリギリだったがために、お願いする時間がありませんでした。最初こそ、足がブラブラしていても「まぁ平気だろう」と思っていたのですが、時間が経つにつれて膝から下が抜け落ちそうになったので、やっぱりフットレストは必須だと思います。バルコニー席に座る場合は気をつけてください。

「もしも碇シンジくんが失踪したら…」の世界線

さて、肝心の本編です。

最初に私の知識レベルについてですが、『エヴァンゲリオン』シリーズは、アニメ版から劇場版の序破Qまでを観ています。シン・エヴァンゲリオンだけまだ観ていません。

完結編を見ていないので、正直舞台版はどうしようかな〜〜と悩んでいました。意味わかんなかったら嫌だな〜とか。ものすごいドラマチックなポスターにビビってもいました。

いたのですが!
全然そんなことなくて、意外にもとても見やすい舞台でした。小学生とかでも楽しめると思う。

ものすごくざっっくりストーリーを説明すると、TVアニメ版『エヴァンゲリオン』で、「もしも碇シンジ君が失踪したら」というお話です。もしもシリーズです。
クレジットに庵野さんの名前がどこにも載っていなかったので、完全なる舞台版オリジナル脚本みたいです。

登場人物は皆、オリジナル版を踏襲したようなキャラクターになっています。
碇ゲンドウは田中哲司さん、葛城ミサトは石橋静河さんなど。

主演の窪田正孝さんは、ポジション的に加持リョウジです。もともとパイロットでしたが、とある事件をきっかけに今は隠遁生活を送っています。野菜作っているあたり加持さんぽい。しかし、少年パイロットが失踪したことをきっかけに、再び戦いの世界へと身を投じていきます。

ものすごい傾斜のなかで芝居が進む

TVアニメ版を思い出してほしいのですが、ストーリー自体は大体あんな感じで進んでいきます。少年少女たちが学校に通っていて、ワイワイしている。よくある光景。

不自然なのは、教室がものすごい傾斜だということです。本当にすごい傾斜。
見た感じこのくらいある。

滑り台のような傾斜でステージが構成されるので、キャストさんたちは最初から最後までほぼ傾斜の中に立って演技している。ダンサーにいたっては、この傾斜の中で倒立していました。
すごくないですか? 

高さもあるので、私が座っている2階のバルコニー席のほうがキャストに近い可能性すらある。

傾斜である理由は、すぐに判明します。エヴァンゲリオンを操縦する際、パイロットたちがそこでフライングをするからです。

ちなみにエヴァは、大中小さまざまなパペット(人形)で表現され、その横でパイロットがフライング(操縦)しています。

ミラノ座だし、エヴァだし、なんとなく最新テクノロジー満載の舞台を予想していましたが、良い意味で裏切られました。演出のシディ・ラルビ・シェルカウイさんも、パンフレットの中で

「舞台上に人間がいて演技やダンス、歌、さらにパペットなど、SF作品を非常に伝統的な手法を使い、新しい劇場で形にしようとしている。とてもアナログなのです」

と言っていた通り、アナログ。むしろ、映像による演出は一部で、大半はキャストの身体表現だったと思います。

思いますというのは、とはいえやっぱり情報量が多い舞台なので、若干後半の記憶が曖昧だからです。これは舞台が悪いのではありません。私の頭が悪いのです。

うかつに聞いてはいけない

芝居にダンスに音楽にと、盛りだくさんなので、見ていて飽きません。
セリフも皆さん明瞭で聞きやすかったです。ただ、カタカナ用語が出てくると「……?」となってしまいましたが、TVアニメ版もそうだったので、大した問題ではありません。

個人的には、少年パイロットたちのお芝居が好きでした。よく動くし、わちゃわちゃした絡みも可愛かった。
田中哲司さんの突然のコンテンポラリーダンスも格好良かったし、
石橋静河さんの身体表現も美しかった。
そして最後には、窪田正孝さんが二の腕を出すという素敵なサプライズも。

見応えがあって、オリジナルファンにもおすすめしたい舞台でした。
なので、さっそくオリジナルファンである元同僚におすすめしました。同時に、「そういえばエヴァンゲリオンって、結局何か深い意味のある作品なの?」と、軽い気持ちで聞いたところ、

朝から、こんなに文章打たせてしまって申し訳ないなって思いました。
今日はそんな元同僚のバースデーイベントなので、楽しんでいきたいと思います。

Happy Birthday!

PROFILE
演劇ライター 中村 未来

​中村 未来Nakamura Miku

千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。

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