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劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』〜後編・え、捏造だった?〜

2023.07.14

劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』〜前編・リバイバルが似合う〜

前編からの続きです↑
いよいよ本編へ!

『クレイジー・フォー・ユー』のあらすじはこんな感じ↓

あらすじ
1930年代、ニューヨーク。銀行の跡取り息子、ボビーは仕事よりもダンスに夢中。母親の命令で、砂漠の町の劇場をいやいや差し押さえに行くが、そこで出会った娘ポリーに一目惚れ。
ところが彼女は、ボビーが差し押さえに来た劇場のオーナーの娘だった。フラれたボビーは、大物プロデューサーのザングラーになりすまして劇場を救う、という作戦に出る。
町の人たちと協力してショーを成功させれば、劇場も恋もうまくいくはず―― しかし皮肉にもポリーは、ボビーが化けたザングラーにぞっこん。
さらにそこへ本物のザングラーが現れた……大混乱の恋のゆくえは!?

なりすまし系ラブコメディですね。「変装ごときで、人を見間違えるか?」というツッコミはご法度です。そういうものだと受け入れます。

物語はザングラー劇場からはじまります。
のっけからボビーのすごいタップダンス。華麗なステップ。足が早すぎて見えない! すごいなぁと感動しながら拍手していると、左のほうから「ヒュウ!」という歓声が。
同じ列に熱心な観客がいらっしゃいました。ダンスシーンが終わるたびに「ヒュウ!」「ヒュー!」「ハァッ!」など、元気な掛け声をかけます。舞台を盛り上げるノリのいいお客さんです。

そもそも『クレイジー・フォー・ユー』はコメディなので、随所に笑えるポイントが仕掛けられています。なのでもっと声を出して(笑って)よい舞台なのですが、日本人はミュージカルで大笑いすることってあまりないですよね。笑うより感心している時間のほうが多いと思います。

休憩中、この男性が話題になった際には「でもアメリカはこんなもんじゃないよ。もっとドッカンドッカン爆笑だからね」と言うと、ハルカさんから「あんたアメリカで観たことないでしょ?」と言われました。ん?

目が足りなくなる『I Got Rhythm』

第一幕では、私はやはり『I Can’t Be Bothered Now』『I Got Rhythm』が好きです。王道です。

『I Can’t Be Bothered Now』で車から踊り子たちがわさわさ出てくるシーンは、ワクワクします。ピンクのネオンがなんか猥雑でいいですよね。踊り子たちのフラミンゴみたいな衣装も可愛い。

一幕を締める『I Got Rhythm』は作品の代表的なナンバーですが、何が良いって、長い!!!! なんと8分。「もうちょっと観たかった」で終わらず、満足するまでみせてくれる出し惜しみのなさ。

ツルハシやらトタン板やら、そのへんにあるものを使ってガチャガチャ音を奏でながら歌って踊ってくれるので、聴いて楽しい、観て楽しい、です。KYOKOさんは「目が足りなかった」と言ってましたが、本当そうだと思います。

改めてストーリーを追ってみると、ボビーって実家めちゃくちゃ太かったんだなということを思い出しました。ママが銀行家だなんて。物件をいくつも持ってるなんて。でも決して驕らない人間力が彼にはあります。デッドロックに踊り子をみんな連れてくるなんて、普通の人ならまずできません。

みんなでショーを作ってデッドロックと劇場に人を呼ぼう〜〜というところで1幕は終わります。

バンダナ姿が輝いてたビリー

休憩中は前述したアメリカンなお客さんの話題ともうひとつ、ビリ―の話でもちきりでした。

ビリーは、男性アンサンブルのひとり。ダンスシーンではポリーの真横にいたりと美味しい場面にたびたび登場します。ビリーの青いバンダナに目を奪われた私は、最後の方は彼のことしか観ていませんでした。なんかすごい輝いてた。演じていたのは深堀拓也さん。日常生活でバンダナしようかなって思うくらい良かったです。

さて続く二幕は、本物のザングラーが登場。本物が現れたらさすがのポリーも気づくよね、と思いきややっぱり気づかない。怪盗キッドばりのボビーの変装。

せっかくみんなで企画したショーにはお客さんがさっぱり来ず、大失敗。ボビーはステージを作るのは得意だけど、宣伝には疎かった。そこがザングラーとの差だな。

意気消沈した人たちが「よっしゃ切り替えてこ」という意味で歌うのが『Stiff Upper Lip』

がんばれとファイトがたくさん出てくる歌詞が可愛いくてこの曲も大好きです。絶望的な状況でも踊っとけばなんとかなるという気持ちにさせてくれます。

しかし、この曲の直後、己の無力さを実感しNYに帰ってしまうボビー。ポリーともお別れしてしまいます。そんな町の人々が大失敗する様子を観ていたのがザングラー。愛人のテスの気を引くため、なんと全財産をデッドロックの劇場に投資。一大興行を打つことを決めます。

だから結局テスがすごいですよね。ザングラーにそこまでさせるなんて。

ザングラーが男気を見せたおかげでショーは大成功。デッドロックの劇場は人で溢れ、町は活気づきます。そして、ボビーとポリーも再会を果たし、めでたく結ばれハッピーエンド! ポリーが最後に着る白いドレスが可愛い。

カーテンコールでは、キャストの皆さんがそれぞれの衣装で登場するのですが、後方の高いステージの上に派手な衣装のダンサーの方が3人います。彼女たちは下に降りることなく、ずっとそこで美しく立っています。「手くらい振らせてあげてもいいのにな」と思ったのですが、その瞬間、高校生のときもまったく同じ感想をもったことを思い出しました。思うことって年齢重ねてもそんなに変わらないんですね。

しかしながら、素晴らしくハッピーなミュージカル。ハルカさんとKYOKOさんもとても感動していたので、一緒に観に来て正解でした。

もしかしたら捏造かもしれない不安

帰りは近くの珈琲館 横浜日本大通り駅前店でお茶をしました。今調べたら今年の6月14日にOPENしたばかりのお店。広々していて良かったです。注文はQRコードからどうぞ。

BLTサンド。

KYOKOさんは「もし『クレイジー・フォー・ユー』に出るなら、真ん中でベース弾く役がいい」と言っていました。『Slap That Bass』のときのムースですね。いい役チョイスしてやがる。ハルカさんはなんだったかな。忘れてしまいました。私は袖で声足す係がいいです。

ところで前編でバックステージツアーの話を書きましたが、S子から連絡が来ました。「あのとき樋口さんいなくなかった?」「主役級の人はそういうところいない気がする」「でもまったく記憶にないからわからん」

そんなはずありません。むしろ私は樋口さん以外見ていませんし、椅子の位置を確認していた様子もはっきり覚えています。でもこの記憶ひょっとして捏造? そう思い込んでるだけなの? 16年くらい前の『クレイジー・フォー・ユー』バックステージツアーに行ったという人、もしいたら真実を教えてください。

PROFILE
演劇ライター 中村 未来

​中村 未来Nakamura Miku

千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。

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