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- 演劇ユニットうにくらげ『unikurage』〜お寺で裸足って最高〜
ミラクルアドバイスで命拾い
俳優の高橋恭子さんと生見司織さんによる演劇ユニットうにくらげの、第一回公演『unikurage』を観に行ってきました。
出演者のひとりである司織さんとは、7,8年前、お仕事がきっかけでお知り合いになりました。仕事が一段落した今も、一緒にご飯に行ってくださる素敵で尊敬する、素晴らしいと思える、数少ない先輩です。
「今度お寺でお芝居するよ」ということで、「行きまぁす!」とお返事したのが今年のはじめとか。
お寺でお芝居? 普段お寺に行くこと自体そんなにないのに、そこでお芝居するなんてどんなことになるんだろうとワクワクしていました。ワクワクしていたんですね。
結論から言うと、観に行く日を一週間、間違えていました。
その日、数年ぶりにお会いする方とお茶をしていたのですが、『unikurage』の話題になり「私は来週行きます」とお話したところ、「舞台は今週末で終わりですよ」と教えてもらったのが観劇日当日のお昼。もしそこで『unikurage』の話しにならなかったら、無断すっぽかしを決めるところでした。
最近、スケジュール管理でよくミスるので、でかい壁掛けカレンダーを買った矢先のことでした。
カレンダーは白紙でした。
靴下を忘れる痛恨のミス
危うく行き損ねるところでしたが、ミラクルアドバイスのおかげで、なんとか命が繋がりました。
場所は東中野駅から徒歩10分のところにある『宗清寺(そうせいじ)』というお寺です。
そういえば夜のお寺って、なかなか入ることありませんよね。お化け屋敷っぽい感じがしました。
お寺なので、当然靴は脱ぎます。ちょっと考えればわかることですが、うっかり靴下履かずにパンプスで行ってしまいました。久々に裸足で踏む畳は気持ちよかったです。
大きな仏壇を囲むような形で、観客席が設置されています。
全然いい写真が撮れなかったのでわかりにくいですが、この中央の畳のところがステージになります。
公演のラインナップは、
「ゴメンで済んだら」 作:芦原健介(JACROW)
「寄る辺のふたり」作:米内山陽子(チタキヨ)
の2作品です。
「ゴメンで済んだら」
戦争が激化した日本。お寺にひとり住む明日香。そこへ昔の会社の部下・沙織が、突如包丁を持って現れる。明日香からのパワハラで人生を台無しにされたと訴える沙織に、明日香は冷静に話し合いをもとうとするが…というお話です。
冒頭、爆音がしたので、最初は雷かと思いました。
雷ってこんな音だったっけ? と思ってたら、じつは爆発音で、この世界は戦争真っ只中なのです。
お茶も貴重なほどに物資は乏しく、お寺周辺にはすでに住んでいる人は誰もいません。家族も友人も失った明日香は、このお寺でたったひとり暮らしています。
明日香のパワハラが一体どんなものだったのかは最後まで明かされることはなかったのですが、沙織の激怒具合いから、かなりのものだったと想像しました。
しかし、加害者である明日香は、お寺暮らしのせいか大分毒が抜けており、パワハラをするような人物には見えない。激怒する沙織にも、頭を下げて神妙に謝罪します。
ただ、沙織はめっちゃキレてるので全然謝罪を受け入れない。包丁を振り回して殺すぞと息巻いてる。
でも私は沙織の気持ちがわかります。こっちは大興奮でキレてるのに、相手が冷静だと余計に頭にきますよね。
明日香が驚いて、逃げ回って、命乞いとかしてくれないと、振り上げた拳をおろせません。なので多分、「拳、下ろせないよね?」というお話なんだと思います。私はそう受け取りました。
もしも自分に非があって、相手がものすごく怒っていたら、その倍のテンションでパニックになって謝ったほうが、その場は収まるのかもしれません。
もちろん明日香は最後まで冷静なのでそんなことにはなりません。というより、沙織が来るよりも前に、お寺と共に心中しようと思っていたのでもはや焦る必要もない。
一方、だんだん近づいてくる爆音に、焦りだす沙織。殺したいと思っていた相手が目の前にいて、ここに放置しておけばそのうち爆弾が落とされるだろうけど、それじゃあまりにも目覚めが悪すぎるよね。ということで、最後は明日香を連れて一緒に逃げます。
戦争で誰もいなくなったお寺に住むという設定が面白いなと思いました。誰もが一度はする妄想だと思います。空気感は全然違いますが、海外ドラマの『ウォーキング・デッド』を思い出しました。たしか荒廃した教会に逃げ込むシーンがあったようななかったような?
ただ自分だったら、明日香は置いていくかな…軽装でサバイバルキットも持っていなさそうなので、ちょっと不安ですし…。
なんだかんだ、沙織は優しいなと思いました。結局包丁も使わなかったし。
「寄る辺のふたり」
交通事故で亡くなった兄弟の一周忌。
同じタイミングで未亡人になった二人の妻が、それぞれの夫について語り合うというお話です。
そんなシリアスな設定ですが、意外にも中身は結構ポップでした。未亡人二人のやり取りが面白かったです。
かたや新婚夫婦、かたや仮面夫婦という、真逆の結婚生活を送っていた二人。仮面夫婦のほうの妻には、じつは好きな人がいたという事実が明かされ、一気に気持ちがズレていく瞬間が笑えました。
小道具として仏壇に兄弟の遺影が飾られていたのですが、すごいシンプルに良い笑顔だったのもなんか笑えました。あれ誰だったんだろう。
とはいえちゃんと深刻なシーンもあって、亡くなった夫に対して、それぞれが思いの丈をぶつけていくところは切なかったです。でもその直後に脱力するようなシーンが入ってるのでやっぱり面白いのかもしれない。
そして何よりタイトルがいいですよね。夫が亡くなって寄る辺のない二人が、お互いに寄りかかってるような感じで素敵です。
お寺を舞台にした、素敵なお芝居でした。
1本30分程度の短いお話でしたが、あとに残るような感じで、良い読後感ならぬ演後感。観後感?
最初は靴下忘れたことを悔やんだりもしましたが、最終的には畳×裸足は最高ということにも気づけたし、良い体験でした。
うにくらげさん、お疲れ様でした!
╰( ^o^)╮-=ニ= ✹
(:]ミ(:]彡(:]ミ(:] 彡
次はどこで公演をするのでしょうか? また変わったところでやるのかな?
今度こそカレンダーを活用したいと思います。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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