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劇団四季『ノートルダムの鐘』〜大人向けミュージカル〜

2023.05.30

※この記事にはネタバレがあります。

劇団四季『ノートルダムの鐘』を観てきました。
ライター勉強会も、翌日に控えたこの『ノートルダムの鐘』を楽しみに乗り越えたといっても過言ではありません。
一緒に行ってくれたのは、地元の友だちハルカさんです。

『アナと雪の女王』『美女と野獣』を一緒に観てくれた優しい人ですが、『ノートルダムの鐘』に関しては悩んでいました。

「正直なところ、特別好きな作品ではないんだよね〜」

めちゃくちゃわかる〜。私も『ノートルダムの鐘』ってそんなに好きじゃないです。

フロローは怖いし、カジモドは可哀想だし、終わり方もそんなにハッピーエンドではない。そうした子供の頃に観た記憶が残っており、全体的に陰鬱な作品という印象でした。
しかしまぁ、ディズニー作品だし一応観てみっかということで行くことに。

浜松町の四季劇場[秋]です。

私たちは、2階C席(4500円)でした。このへんです。

でもステージ全体見渡せるし、ストレスはそんなにない。

あらすじは一番重要なところを切り取るとしたら、

ノートルダム大聖堂を舞台に、3人の男がひとりの美女を取り合う

というお話です。

ちなみにハルカさんは、ディズニー映画版を観たことがなかったそうですが、「生きてると自然とネタバレって入ってくる」とのことで、結末については知っているようでした。
そんな感じで一幕がスタートします。

音楽こんなに格好良かった?

始まった瞬間すぐに思いました。めちゃくちゃ良い。
文章で表すのが難しいです。でも感動した。
舞台版の音楽もディズニー映画と同じく、アラン・メンケンが担当しています。
真剣に聴いたことなかったけど、『ノートルダムの鐘』ってこんなに曲良かったんだなってオープニングから衝撃。

ストーリーはフロローの過去から始まります。
フロローはもともと双子の孤児で、大聖堂に引き取られて育ちます。信仰心の篤いフロローに対し、遊び好きの弟ジェアン。
成長し二人は決裂したものの、ある日ジェアンから連絡が。そこには重病ですでに瀕死のジェアンの姿。ジプシーとの間にできた赤ん坊をフロローに託し、息絶えてしまいます。
醜い容貌の赤ん坊を一度は捨てようとしたフロローでしたが、葛藤の末育てることに……。

ここまではまだ良かった。弟の子供を引き取るまでは偉かった。

なんで、“出来損ない”の意味を持つカジモドなんて名前つけちゃったんでしょうか? 神様への忠誠心はあるけれど、根本的に人への優しさがまったくない人物なんでしょうね。でも私はディズニーヴィランズの中ではフロロー結構好きです。悪いやつだけどなんか憎めないところがある。

ところでこのエピソード、ディズニーアニメにはありません。そこで気づきます。「そうかこれ、ディズニーアニメではなく、ヴィクトル・ユゴーの原作寄りのストーリーなんだね!」ということに。

もちろん今回もNO知識で行ったので、上演中に気が付きました。アニメ版を観ていないハルカさんはきっとまだ気づいていない。

ディズニーアニメでは、エスメラルダに恋する3人の男のうちの一人であるカジモドにスポットが当たっていましたが、舞台版では主要キャスト4人それぞれが主役みたいに扱われていました。

エスメラルダも妖艶で美しくて、フィーバス隊長も格好いいんだけど、やっぱり目がいくのはカジモド。私が観た回は寺元健一郎さんが演じていました。

芝居中はたどだどしい喋り方なのに、歌い上げるときのものすごい美声。振り幅が半端なかった。特に歌がすごく良くて、「何度も鳥肌が立った」(ハルカさん談)。

ディズニーアニメで登場したガーゴイル(石像)たちは、ユーモラスなキャラクターではなく、「カジモドに語りかける石」として登場します。
ときに石像として、ときに民衆として、いろいろな姿に変わるアンサンブルの方々もすごく良かったです。

先日観た『エヴァンゲリオン』もそうでしたが、体を使って表現するアナログな演出って観ていて楽しいですよね。たくさん動く人を見るのは、気持ちいいです。

一幕の終盤、フロローがいよいよおかしくなっていきます。最初からおかしかったのですが、エスメラルダへの想いが実らないと知り、彼女を殺そうとするわけですね。とんでもない男ですね。もみ合いになったのちに、フィーバスを刺してしまいます。

エスメラルダは、怪我を負ったフィーバスをカジモドに託したところで第一幕は終わり。
休憩中はフロローの話でもちきりでした。

「子供の頃に自分を無理に抑え込むと、大人になってから爆発するいい例」(ハルカさん談)

本当そう。自由に生きないとダメだやっぱり。

フィーバス隊長はその後どうなったのかな

休憩を挟んで第二幕です。
狂気のフロローの暴挙が止まりません。

ジプシーたちを迫害し、エスメラルダを罪人として捕らえてしまいます。挙げ句、「俺と一緒になるか死ぬか選べ」という究極の二択まで出す始末。しかし誇り高いエスメラルダは、フロローに屈することなく火炙りになることを選びます。

覚悟を決めたカジモドが救出し、大聖堂へと連れて帰るも、エスメラルダはそこで命を落としてしまう……。

原作ってこんなに悲しいんですね。バッドエンドとは知っていたけど、切なすぎる。
それでもまだ愛を語ろうとするフロローに怒ったカジモド。大聖堂の手すりからフロローを投げ落とします。

このあとのカジモドの「僕が愛した人がみんな横たわっている」という言葉が一番グッときました。「たち」ってことは、フロローも入ってるのか。あんなに虐げられていたのにやるせない(;_;)

「怪物をつくるものは?」「人間をつくるものは?」と問いかけて、幕を閉じます。

もしかして上半期で一番良いと思った舞台かもしれない『ノートルダムの鐘』。

すごく感動しました。歌も音楽もお芝居も演出も良かった。ミュージカルを観ると、ディズニーアニメ版がいかにハッピーエンドだったかというのもわかる。
公演パンフレットによると「大人向きのミュージカル」だそうです。なるほど、だからか〜ハマってしまうのは〜。

ちなみに、パンフレットの稲垣直樹先生による『ヴィクトル・ユゴーと「ノートルダム=ド・パリ』と、ライターの兵頭あおみさんによる『ディズニーの信念から生まれたミュージカル「ノートルダムの鐘」』の記事がすごく読みやすかったです。作品の背景がよくわかります。

そういえばフィーバス隊長はその後どうなったのでしょうか? なんとなく、最後カジモドとエスメラルダの白骨死体を見つけたのがフィーバスかなと思って、原文の台本で確認しようと思ったのですが見当たりませんでした。知っている人がいれば教えてください。

ハルカさんも大満足で、特に私たちの意見が一致したのはこの作品を「4500円」で観賞できたということです。こんな安く観れていいの? と本当に思った。

観劇のあとはビールで乾杯

さて、観劇後は大門駅近くの「魚金仕入部 マグロ課」に行きました。

お通しはカニクリームコロッケ!

生牡蠣もうまい!

友達と素晴らしい舞台を観て、締めのビールって最高すぎませんか? 
今回もありがとう、ハルカさん。
ノートルダム大聖堂の再開予定は2024年年末らしいので、その頃一緒にパリ旅行しましょう。

PROFILE
演劇ライター 中村 未来

​中村 未来Nakamura Miku

千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。

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