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- 舞台『メディア/イアソン』後編〜こういう人、ギリシャにもいたんだ〜
『メディア/イアソン』後編です。
恐ろしいことが発覚しました。
先日UPした『メディア/イアソン』前編で、
「毎回ギリギリ到着で、チケットの発券で手間取る私ですが、今回は早めに出発。なんと会場の10分前に到着するというじつにスムーズな道中でした。
早めに着いたのでキャロットタワーを散策してみると、3コインズやカルディなどの雑貨屋さんや、ユニクロやカフェなど衣料品店や飲食店も入っていて、楽しめる施設でした。ギリギリ到着だったら、こんなに巡れなかっただろうな。
というふうに書きました。
いつもだったらギリギリ到着で慌ただしいのに、今回は大成功☆
という気分でいたのですが、肝心の目的地の記述が間違っていました。
世田谷パブリックシアターは、御茶ノ水駅から徒歩4分の場所にあります。
これは間違いで、正しくは
世田谷パブリックシアターは、三軒茶屋駅から徒歩4分の場所にあります。
御茶ノ水じゃない、三茶。
“茶”間違い。コメントをくださった方がいて、はじめて気がつく。
文章の中では、やっぱりたどり着くことができませんでした。
とにかく間違えないといられない、そんな性分なんだと思います。
間違えた部分は、ライターらしく赤字にしておきました。己への戒めです。
さて、気を取り直して本編です。
2つの作品が合体した内容になっています
今回座ったのは3階席のこのへん。
後ろに人がいないと、気楽です。
劇場自体がそんなに大きくないので、3階席でも舞台からめちゃくちゃ遠いって感じはしません。
天井が近いのですが、青空のイラストが施されていて、ほっこりします。ここは屋外のイメージなんだな??
今回の『メディア/イアソン』の舞台は、2つの物語で構成されています。
前半がアポロニウスの『アルゴナウティカ アルゴ船物語』
後半がエウリピデスの『メディア』
アルゴ船物語は、イアソンが金羊毛を手に入れるため、船で大冒険に出るストーリーです。旅先で出会ったメディアと恋に落ちる、いわば『メディア』の前日譚として描かれています。
で、後半になって、『メディア』の愛憎劇へと繋がっていくわけです。
やはり、クライマックスの後半が盛り上がる部分かな……と思っていたのですが、前半から結構飛ばした内容でした。私は特に、終始激情に駆られるメディアを見ているのが面白かったです。
☆金羊毛をゲットしに、大航海の旅に出るイアソン☆
叔父上の嫌がらせに遭って、唐突に旅に出されるイアソン。「海の向こうにある太陽の王国アイアに行って、王様から金羊毛を奪ってこい」と無茶振りされます。カムバック不可能な死の旅に出されるのです。
そもそも金羊毛ってなんだろう? と思いましたが、ギリシャの物語だから、なんかそういうアイテム的なものなんだろうな……。
ご機嫌でイカれた仲間たちの助けもあって、イアソンはなんとかアイアに到着。
そして、国のお姫様であるメディアと運命的に出会います。
運命的に出会うと言いつつ、じつは、メディアの一方的な一目惚れでした。少なくとも、このお芝居ではそう描かれていた。
直前まで「月の女神に一生付いていく☆(意訳)」とか言ってたくせに、王様と喋るイアソンを見て、たちまち恋に落ちてしまうのです。その恋の落ち方も独特で、「命賭けます」くらいに熱く滾っている。
恐らく原作では、もっと2人のやり取りとかが入っているのでしょうが、一人で浮かれまくって、病み始めているメディアが面白かったです。
☆イアソンのために、弟を切り刻んで海に捨てるメディア☆
メディアが一人心乱している一方、イアソンは、ここでも王様に無茶振りをされていました。
金羊毛がほしければ、巨人とか青銅の足を持った雄牛とかと戦えと言われます。
困り果てたイアソンを見たメディアは、悩んだ末、手助けすることを決めます。
じつはメディアはお姫様でありながら、特別な力を持った魔女でもありました。なので、イアソンが金羊毛をゲットするのを手伝うことなど、お茶の子さいさいだったわけです。
しかし、イアソンを助けるということは、すなわち父親を裏切るということ。この時点で、メディアはイアソンに人生を捧げることを決意しているのです。なんて過激な女なんだ。
結局、父親を裏切るどころか、追ってきた弟をバラバラにして海に捨ててしまいます。
大恋愛のように見えるけれど、どこまでもメディアの一方通行、一人祭り状態にように見えました。イアソンはあんまり意志ない。「あ、助けてくれてありがとう」くらい。
この始まり方を見る限り、もう2人の未来に暗雲が立ち込めていることが感じられますね。
☆結婚12年、若い女に乗り換えられて捨てられるメディア☆
ここから、エウリピデスの『メディア』に入っていきます。
イアソンとともに、縁もゆかりも無い国へとやってきたメディア。3人の子供に恵まれます。
が、イアソンは段々とメディアへの愛を失っていくのです。やっぱりなというしか……。むしろ12年もよく持ったほうなんじゃないか。
政治的な策略から、国の若いお姫様と結婚することにしたイアソン。悪びれることなく、あっさり妻子を捨て去ります。井上芳雄さんのクズの演技がとても良かったです。
嫉妬に狂ったメディアは、イアソンへの復讐のため、毒を使ってお姫様とその父親を殺害(←このあたりは魔法の力もあるようです)。
もっとイアソンを苦しめるため、幼い我が子3人までも手に掛けます。
ドラクロワが描いた『怒れるメディア』には、子供は2人しかいませんが、伝承によって子供の数はひとりだったり、2人だったり変わるんだそうです。今回は脚本のフジノサツコさんの意向により3人でした。
なんとも言えない最悪な結末。最初から最後まで、勝手に盛り上がるメディア。
いわゆる女の嫌なところを煮詰めたようなってやつ。
こんなやつ身近にいたらまじで嫌だなって思うけど、こういう人いますよね。ギリシャ時代から普遍の人間像なんだろうな。
ストーリーが思いの外面白かったので、長くなってしまいました。
後編といったのに。
次回、最終回でさらに内容に触れたいと思います。あとパンフレットについても。
続きます。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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