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- DWT『What If If Only―もしも もしせめて』〜邦題に惹かれる〜
久々の観劇はやはり・・・
上半期は、いろいろと立て込んでいて、全然観劇できませんでした。
久々に観に行けることになり、選んだのがこちらです。
DISCOVER WORLD THEATRE
『A Number―数』
『What If If Only―もしも もしせめて』
二本立てです。
DISCOVER WORLD THEATRE(DWT)とは、「Bunkamuraが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズ」として、2016年秋からスタートした企画です。
私は2022年春、堤真一主演の『みんな我が子』以来2回め。
どれを観に行こうか迷っていましたが、堤真一主演の文字を見て、即決しました。
久々の堤真一に胸が高鳴ります。
今回の作品は2本とも、イギリスの劇作家、キャリル・チャーチルの戯曲です。
『A Number―数』は2002年初演、2022年にローレンス・オリヴィエ賞リバイバル部門にノミネートされた名作。日本では3回目の上演です。
『What If If Only―もしも もしせめて』は、2021年初演、日本で上演されるのは今回がはじめて。
演出は、DWTシリーズ4作目ジョナサン・マンビィ。
私は多分はじめて観ます。
そして、イギリスの作家の現代劇も、恐らくはじめて。
どんな感じなんだろう。
奥の席ははやめに着席したほうが気まずくない
上演するのは世田谷パブリックシアター。
今年の3月に観た『メディア』ぶりです。
今回は特にアクシデントもなく、普通に劇場に到着しました。
私が座ったのはこのへん。
3階席の最後列から2番目です。
隣はすぐ壁ですが、位置的にはほぼセンター。当然ステージからは距離がありますが、視界は開けていてストレスフリーです。
難点としては、前の座席との距離が近いので、出入りする際は隣の人に一旦通路に出てもらうしかありません。それありきの座席ですが、ちょっと気まずいです。
もしも もしせめて
上演はまず『What If If Only―もしも もしせめて』から。
25分の短い作品です。あらすじはこちら。
愛する人を失い、某氏は苦しみの中にいる。
もしせめてあのとき、ああしていたら。
もしせめてあのとき、ああしていなかったら。
願わくば、愛する人とまた話がしたい。
ただただ、愛する人に会いたい。
果てしなく続く自分への問いかけと叶わぬ願いを抱えるなか、某氏の前に、起きなかった“未来”が現れる。
そして、起きえたかもしれない、たくさんの“未来たち”も。
混乱する某氏に声をかけるのは、“現在”だ。
良いことも悪いことも、何が起きても起きなくても、未来へ向かっていまを生きていくしかない。
やがて来るべき幼き未来が姿を現すだろう。
大東駿介さん演じる「某氏」は、愛する人を失い、悲しみのどん底にいます。
「そこにいるならもう一度姿を見せてほしい」と言う某氏の前に表れたのは、浅野和之さん演じる「未来」そして「現在」。さらに「幼き未来」も登場し、某氏に語りかけていきます。
あらすじを見ておわかりの通り、なかなかに抽象的なお芝居です。
二人の会話も、観念的なことを、超話し言葉でやり取りするので、理解するのが難しいです。
どうやら英語版の戯曲では「、」「。」といった句読点がほぼないそうです。そのため文の区切りや、役者が何をどこまで言おうとしているのかを読み取るのが難しいんだとか。翻訳するのさぞ大変だったろうなと思います。
「ある未来」として登場した浅野和之さんが、いきなり女装だったので、「これはコメディなのか?」と一瞬思いましたが、笑えたのはそこだけで、あとはシリアスなシーンが続きます。
起きるはずだった「大勢の未来」たちが一気に押し寄せてくるシーンは、なかなかにホラーでした。
プロジェクションマッピングと身体表現を使い、いろんな方向から「大勢の未来」たちの声が聞こえてきます。なお、パンフレットを見たら、声の出演に黒木華さんの名前がありました。
途中、わけがわからなくて「何が起きて、何が起きてないのか?」頭が混乱しましたが、終盤になると、「なるほど、こういうお芝居なのか」と納得して、心穏やかに見ることができました。
抽象的なお芝居って、10回くらい観て、やみつきになっていくことが多いので、1回じゃ難しいですね。
この「某氏」は、性別の指定がなく、男性が演じても、女性が演じても成り立つようになっているそうです。まさに実験的。
あと私は邦題の「もしも もしせめて」が好きだなと思いました。
「If only」は、「~さえすればいいのに」「~でさえあればいいのに」という意味で、現実とは異なることを求める願望を表す表現です。意味合いとしては「I wish」と同じですが、より強く、やや切実さがある表現です。
↑
AIが教えてくれました。
せめてあのとき(ある出来事が)起きてくれたらな〜〜〜って、お芝居。人生を感じました。
『A Number―数』は次の記事で書きたいと思います。
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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