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- パフォーマンスユニットTWT『SANADA Ⅺ』〜後編・失われた時を求めて〜
※激しくネタバレなのでご注意ください※
前編はこちら。
『サナダイレブン』の舞台美術を担当しているのは、方勝先生。方先生もやはり玉大でお世話になった先生で、授業で鏡獅子の模型を作ったのはいい思い出です。
ステージは開放された状態で、前方には真田家の家紋である六文銭がスポットライトに照らされています。ポケモンの話をしていると、いよいよ開演。
個性的すぎる十勇士たち
舞台上が照明で照らされてはじめてわかったのですが、ステージが思ったより広い。
下手には奈落に繋がる下り階段、上手には舞台後方にある高いステージへと続く上り階段がありました。照明が落ちているときは見えなかったので、一気に空間が変わったなという印象です。
あらすじ
慶長十九年・秋高野山麓九度山に幽閉されていた真田幸村は十人の勇士を従え、亡き太閤秀吉の忘れ形見秀頼公を守るため、大阪城に入城。世に言う“大阪冬の陣”の幕開けであった・・・。
時代もののお芝居ですが、衣装もセリフも現代劇なので見やすいです。
13年ぶりの観劇でも同期が演じていたせいか、ストーリーも台詞も意外と覚えている。
時代背景の説明など情報量が多いので、むしろ今回のほうが理解できたような気すらします。
大阪冬の陣を前に、真田幸村のもとに集まる個性豊かな十勇士たち。
女たらしの筧十蔵に、客引きしてる根津甚八、なぜかニッカボッカ履いてる由利鎌之助などなど。
ピックアップしたいのはやはり、三好伊佐入道役の金井迪大さん。『カレーライス』では、ミニスカートのチアリーダー姿で私とKOMATSUさんを爆笑させてくれました。
今回の金井さんは、完全なるスキンヘッドでした。勇猛で豪傑な坊主(なの?)ですが、おちゃめなシーンがたくさんあって、金井さんにぴったりの役です。
十勇士の中には女性が二名いるのですが、そのお二人が可愛かったのも印象的でした。
穴山慎之助役の黒澤美澪奈さんと、楓役の水原ゆきさんですね。可憐な感じなのに、殺陣シーンでは急に格好良くなってギャップが素敵。
失われた時を求めて現象
ベースはコメディです(そもそも馬が棒)。
戦って、遊んで、合宿みたいなことして、四大海作品おなじみの団体芸やら小ネタもたくさんあって楽しめました。
一方で死地に行く十勇士たちの心の葛藤や、愛する人との切ない別れなど感情を揺さぶるシーンも多々。運動量も多い。改めてみると、めちゃくちゃ大変で忙しいお芝居ですね。
そして何より青春。青春をすごく感じました。
じつは始まってしばらく、なんかムズムズとしたよくわからない感情に襲われていました。
学生のときと同じ舞台を観たことによって、自分でも忘れている何かしらの“恥”の記憶が呼び覚まされそうになったのです。客席の片隅で、密かにプルーストの『失われた時を求めて』現象が起きようとしていました。
頑張って集中して記憶を封印しました。危なかった。
ちゃんと観てはいたのですが…
さて最後は、激しい戦いの末みんな死んでしまいます。
ひとり生き残ったのが霧隠才蔵。ときは流れ、才蔵は仲間の敵である徳川家康を討つため単身敵地へと飛び込みます。気づけば周りには、真田幸村と十勇士の仲間たち。
これは夢か現実か? 馬に乗って、みんなで駆け出してEND。
約2時間にわたる激しい群像劇でした。
一緒に観劇した同期たちは、学生時代に『サナダイレブン』を演じたわけですが、彼らの感想も興味深かったです。演出の意味が今になってわかったとか、あそこで苦戦したなとか。
なるほど?
私は、霧隠才蔵が福姫を見殺しにしたのが納得いかなかったのですが、あれは忍びとして生きてきた才蔵がはじめての気持ちに気づき戸惑い、どうすることもできなかった後悔を表す重要なエピソードで、「おまえ全然わかってねーな!!」とのことでした。ごめんなさい。
また、ラストシーンで才蔵は死んだのか? についてですが、「話し合いの末、徳川家康を討ったときに死んだという解釈に落ち着いた」とのことです。戯曲にはない設定ですが、今回上演した十勇士たちはどう解釈したのでしょうか?
それにしても、みんなが感慨深げなのを見て、私も感慨深かったです。
徹夜も普通だった当時は、終わらない稽古に絶望したこともありましたが、過ぎてみれば本当に青春だったなと思います。
あまり思い出すと、またマドレーヌが出てきそうなのでこの辺にしておきます。
帰りはキーマカレーでした。
TWTの次の公演も楽しみにしています\(^o^)/
KOZOさん、四大海、キャスト・スタッフの皆様お疲れ様でした\(^o^)/
中村 未来Nakamura Miku
千葉県習志野市出身の演劇ライター、シナリオライター。
玉川大学芸術学部卒業。
趣味は演劇鑑賞と漫画を読むこと。
東京都在住。
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